【基礎知識】「リスキリング」は知っていますか?意味と目的を徹底解説

  • | 公開 2023年03月01日
【基礎知識】「リスキリング」は知っていますか?意味と目的を徹底解説

2022年以降、日本でもやっと浸透しつつある「リスキリング」なる言葉。まだ耳なじみのない方が多いと思いますが、かくいう私も理解があやふや…。一緒に一つずつ紐解いていきましょう~!
エンプレス編集部:yagi(@pl_enpreth

「リスキリング」という言葉をしっかり理解できている人はどれくらいいらっしゃるでしょうか?

2022年には、ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされたり、岸田総理が「リスキリング支援に5年で1兆円を投じる」と所信表明を行ったのが朝刊一面トップを飾ったり…と、やっと日本にも浸透しつつある様子がうかがえます。

そこで今回は、そんなビジネストレンドともいえる「リスキリング」を深掘り!

言葉の意味から目的、実践方法に至るまで一緒に学んでいきましょう。

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リスキリングとは

まずは、リスキリングの意味から見てみましょう!

リスキリングとは端的に言うと「学び直し」。

英語では「Reskilling」と記され「Re」+「Skilling」の二語に分割できます。

Reは日本語訳すると「再び」、Skillingは「スキルを磨く」と訳せるので、総じて「学び直し」というわけです。

この「学び直し」が指すのは「既存の業務から離れ、新たな業務に就業する際、すぐ適応できるために必要なスキルを獲得しておくこと」。

でもいまいちピンとこないので、例を挙げながらもっと具体的に見ていきましょう!

昨今、IT技術の発展により、人間がやっていた仕事がロボットにとって代わられたり…なんてことが増えてきましたよね。

そして今後も加速していきます。

例えば、

  • 工場での製造作業
  • 事務作業
  • 倉庫での荷物運搬などの肉体労働

といった業務は最たる例で、近い将来ロボットが現場をまとめていくことも考えられるでしょう。

そうなると、そこで働いていた社員たちは仕事を失うわけですが、ロボットにとって代わられたことで新たな業務も出てくるのです。

一例として挙げると下記のような業務です。

  • ロボットのプログラミング
  • 社内システムの管理
  • システム管理を行う従業員たちの管理

でも、今まで肉体労働をメインに仕事していたのに、急にプログラミングをやってほしいと言われても対応できる人はほとんどいないでしょう。

こうした状況で、すぐに新たな業務に従事できるようにスキルを身に付けておくことを「リスキリング」と呼びます。

つまり、リスキリングとは「成長分野の仕事へ就労移行するために学び直すこと」と言えばより分かりやすいのではないでしょうか。

リスキリングの目的

リスキリングを実施する意義として「成長分野への就労移行」を見越してのこととお話しましたが、その背景には急速に動きが進んでいくDX(デジタルトランスフォーメーション)※1やGX(グリーントランスフォーメーション)※2があります。※1 DX…AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を用いて、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出を図る動きのこと。※2 GX…石油や石炭などの化石燃料を可能な限り使わず、クリーンなエネルギーを活用していこうとする動きのこと。

今後、企業が今以上に成長を遂げるためには、それらデジタル技術の導入・運用や、成長分野への新規事業参入が欠かせません。

とはいえ、現在日本には高度なデジタル技術に対応できるIT人材が大きく不足しているという問題も…。

そのため、リスキリングの狙いとは、社員たちに新たなスキルを身に付けてもらうことで、成長分野でも活躍してもらうことと言えるでしょう。

リスキリングが一躍話題になった理由

リスキリングが話題となった理由の一つに、2020年に行われた世界経済(ダボス)会議の存在があります。

ダボス会議では、『リスキリング革命』となるものが発表され「2030年までに世界で10億人のリスキルを目指す」と表明されました。

グローバル化により、企業の海外進出が進むなかで激化する企業競争を生き抜くために、今や国内外問わず、リスキリングの必要性が叫ばれています。

また、リスキリングが日本国内で話題となった背景には次の2つの社会的要因が挙げられます。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
  • 新型コロナウイルスの流行により変化した働き方

特に、昨今の世界的トレンドであった新型コロナウイルスの猛威が働き方にも関係し、テレワークの浸透でオンライン業務が当たり前に。

むしろ物理的距離がある顧客との間ではオンライン対応が必須となり、否が応でもITスキルを身に付けなければいけない状況がリスキリング注目の後押しとなりました。

類語との違い「リカレント」「アンラーニング」「OJT」

リスキリングと似た言葉に「リカレント」「アンラーニング」「OJT」の3つの言葉があります。

ビジネスパーソンなら耳なじみのある言葉ですが、リスキリングとは違う意味合いを持つのでしっかり覚えておきましょう。

リカレント

リカレントは英語だと「Recurrent」となり、訳すと「繰り返す」「循環する」の意味になります。

一般的には、「リカレント教育」として使用されることの多い言葉ですが、これは「学校教育卒業以降も、必要に応じて就労と学習を交互に繰り返し、生涯にわたって学び続けること」を指します。

言い換えると、「生涯学習」です。

リスキリングとリカレントの違いは主に以下の2つが挙げられます。

  • 学習のために就業から一度離れるかどうか
  • 導入目的が企業側にあるか個人側にあるか

リスキリングでは、就業中に新分野を学びますが、リカレントでは学習期と就業期に分かれています。

さらに、リスキリングは企業側の目的に対し、リカレントは個人の目的として導入される点も異なります。

アンラーニング

アンラーニングは英語では「Unlearning」と記され、日本語では「学習棄却」と呼ばれます。

これは、「これまでに自分の中に培った価値観や知識を見直して取捨選択し、捨てたものの代わりに新しい価値観・知識を取り込むこと」。

ずっと同じ価値観や知識でいるのではなく、現状に合わせて学びを修正します。

つまり、アンラーニングでは学びの「棄却」を重視しているわけですが、リスキリングでは学びの「獲得」を目指しているため、両者では目的が異なっています。

OJT

OJTとは「On-the-Job Training」の略で、職場で実際に業務を担当するなかで業務知識を身に付ける育成手段の一つです。

つまり、業務知識のインプットよりもアウトプットを重視する、実践主義の育成方法と言えます。

このOJTでは社内業務が学習対象となりますが、リスキリングでは社内業務とは離れた新分野の業務慣れが目的となる点で意味が異なります。

リスキリング導入のメリット・デメリット

企業がリスキリングを導入することで起こるメリット・デメリットを、それぞれ社員側・企業側の2つの観点からまとめました。

一つずつ見ていきましょう!

メリット

社員側

収入もスキルもゲットできる

リスキリング支援はいわゆる企業内の育成支援の一つです。

そのため、働いてお給料をもらいながら新たなスキルも身に付けられるため、経済面でも安心して学習を進められます。

社会的価値を高められる

社内育成とはいっても、成長分野に関する業務を学べるため汎用性は高く、転職を考える際にも有利になるでしょう。

特にIT人材は日本国内を見ても大きく不足していることから、専門スキルを身に付けることができれば社会的にも高需要です。

企業側

社員のエンゲージメント向上につながる

学びの機会を提供するリスキリングでは従業員の成長意欲を支援できるため、エンゲージメントの向上にもつながります。

さらにエンゲージメントの向上は、業務生産性も高め、業績の好調化も期待できるでしょう。

社内業務に精通した人材を獲得できる

企業全体で見ても大きな不足であるIT人材を社内で育成し獲得できれば、“デジタル処理にも対応できる社内業務精通者”を生み出すことができます。

社内をよく知り、業務についても良く知り、加えてデジタル技術を持った人材がいればいるほど、スムーズな仕事進行が可能となり業務効率化が望めます。

デメリット

社員側

「強制されてやっている」と感じることも

今の業務でも十分満足している人にとっては、リスキリングは企業からの課題と捉え「強制されてやっている」と感じることもあるかもしれません。

特に、これまでのものとは全く作業内容が違う場合にはその傾向が強いでしょう。

企業側

育成コストがかかる

リスキリングの導入コストとして巨額の投資が必要になります。

カリキュラム作成やシステム管理などへの初期投資はもちろん、講師を招いてセミナーを開催する場合には外部発注費も掛かるため、内部強化への予算は多く見積もっておく必要があります。

リスキリングで人気のスキル4選

リスキリングで重視されるスキルとしてDX関連のものが多いと思われがちですが、比較的幅広いスキルが対象になっていたりします。

ここでは、人気スキルのなかでも特に注目の4つをピックアップしました。

プログラミング

コンピューターの動きの基盤となるプログラムを作るプログラミング。

最近、小学校や中学校でも必須教科として指導されるようになるなど、新時代の絶対的スキルとして注目されています。

企業内でもデジタル技術が多く活用され、そのシステム管理を担うことができるプログラマーには高いニーズが集まっています。

データ分析

データ分析とは、蓄積された膨大なデータを、適切な方法を用いて分析する作業のことです。

アクセスデータや購買データといったデータ群を分析できると、マーケティング戦略の立案・策定などにも役立てられるため、とても重宝されているスキルです。

コミュニケーション分野

コロナ禍でテレワークの導入が進んだことで、オンラインコミュニケーションの機会が増え、対人関係の要となる高いコミュニケーションスキルがより求められるようになりました。

高いコミュニケーションスキルは、円滑な業務推進に欠かせないため、管理職やリーダーを担う人材にとっては必須スキルの一つです。

英会話

グローバル化が進むなか、英会話の重要性はとても高まっています。

英語が話せれば、海外赴任という新たな道も開け、グローバルなキャリアアップを望めます。

リスキリングの導入方法

企業でリスキリングを導入する際には「何のスキルを」「どのように学んでもらうか」という点がとても重要!

リスキリング導入を成功させるために、次の4ステップを踏むようにしましょう。

①現状分析で今後必要なスキルを選定する

企業や社員に今後何が必要なのかを明確にするため 、業績や経営戦略に基づいて現状分析を行います。

どのような人材戦略を実現したいのか、今不足している人材はどんなタイプかといった、リスキリングを行う「目的」と「対象」を洗い出します。

ここで大切なのは、リスキリングをあくまでも手段として扱うこと。

間違っても、リスキリングをすることが目的とならないようにしてください。

②リスキリングのプログラム及びコンテンツの策定

定めた人材戦略、求める人材が決定したら、次はそれを実現するためのプログラムを策定していきます。

これがリスキリングの内容になります。

もちろん会社によって適したプログラムは異なるので、社員 が効率よく学べるプログラムを作成することが大切です。

プログラムの構成、順番にも気を付けながら、スキルの習得度合いが最も高まるコンテンツにしましょう。

またこの時、使用する教材もいくつか用意しておくのがおすすめ!

社内研修、オンライン講座、eラーニング、もしくは外部人材を雇うなど、社員が学び方を選べる環境にしておくことも学習意欲の促進につながります。

③社員にプログラムを受講してもらう

プログラムを策定し、コンテンツ制作が完了したら、次は実際に社員に受講してもらいます。

リスキリングを導入する際には、社員のやる気低下を防ぐため、就業時間外での取り組みは極力避け、全社一括で取り組む時間を設けるのが良いでしょう。

④業務で実践

スキルや知識がインプット出来たら、最後は実践で活用します。

あらかじめ社内で実践できるような仕組みを作っておくと、活用機会が確実に確保できるため、予算に余裕がある場合は検討してみるといいかもしれません。

リスキリングを実施するときの注意点

リスキリングを導入する際には、学習者となる社員の気持ちを考えた環境整備をしましょう。

特に、次の2点は怠ると社員のやる気や信頼を落とすことになります。

「なぜ取り組むのか」を明確に

「リスキングを導入して、企業としてこういう姿を目指している」といった、社員のなぜに答える説明を必ずしましょう。

経営層がいくらやる気に満ちていても、実際に学習するのは社員です。

経営層と社員の間でやる気のギャップが生まれないよう、リスキリング導入の経緯と目的はしっかり話しておくのが良いですよ。

また、意識が共有されることで学習に取り組みやすい環境に仕上がります。

学習を無理強いしない

学習の無理強いは、社員にストレスを与え、学習意欲を低下させます。

そのため、全社員にやらせるのではなく、挙手制にして意欲的な人材のみにするなど、社員の状態を見ながら進めていくことが大切です。

またリスキリングに自主的に参加している場合でも、業務の間を縫って学習していることを忘れず、過度な学習促進は避けましょう。

各企業のリスキリング導入事例

最後は、各企業で行われているリスキリングについて見ていきましょう!

ここでは、大企業、中小企業、ベンチャー企業の3つの企業規模ごとに、特に支援が充実している企業をピックアップしました。

株式会社博報堂

大手広告代理店、株式会社博報堂では企業内大学「HAKUHODO UNIV.」を展開し、プログラミングやデータ分析、デジタルマーケティング、英語、ビジネススキルなど幅広いカリキュラムを実施しています。

プログラム内容の濃さから、社員からも好評の声が多く、リスキリング対象者の半数以上が自主的に受講。

また、過去に好評だった講座を新設するなど、社員の声にもしっかり耳を傾ける取り組みで、社員のスキルアップに対するモチベーションアップや、エンゲージメントの向上につながっています。

株式会社LIFULL

不動産情報サイトを運用する株式会社LIFULLでは、2009年から企業内大学「LIFULL大学」をスタートしています。

カリキュラムを「必須」「選択」「選抜」の3段階に分け、スキルアッププログラムやマネージャー・次世代リーダー向け育成プログラムを提供。

「選択」では年間30‐50回ほどの講座が開かれ、実務に役立つことはもちろん、パパママ向けのコンテンツもあったりと幅広いプログラムが特徴です。

株式会社メルカリ

有名フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリでは「mercari R4D PhD Support Program」を導入し、希望社員を対象に博士課程進学を支援。

学費のサポートや、研究時間確保のために勤務時間を調整できるようにするなど、仕事と学習が両立しやすい職場環境を整えています。

まさに、リスキリングとリカレント教育の良いとこ取りをした制度で、発表当時注目の高かったリスキリング事例です。

最後に

今回も最後までご覧いただきありがとうございました!

多くの社員育成手段があるなかで、今大注目の「リスキリング」。

昨今国をあげて推進するようにもなり、今後ますますその言葉を聞く機会は増えるでしょう。

カリキュラムを選べたり、媒体の多様化で“自分らしく”学べるところも「リスキリング」の魅力なのかもしれませんね。

今回の記事を読んで、読み始めは「リスキリングって?」と疑問に感じていた方も、理解を深めていただけていたら嬉しいです。

記事を書いていて、「リスキリング」って大学の講義みたいだなと感じました。時間が限られている大人にこそ、“選んで学ぶ”機会は大事…!
エンプレス編集部:yagi(@pl_enpreth)

基礎的な人材管理はできていますか?

今後リスキングが求められるようになってくるけれど、そもそも現時点で人材管理があまりうまくいっていない...。このような課題があるなら、タレントマネジメントに特化したシステムを導入してみるのもいいかもしれません。
情報探しで遠回りせず、最短で結果を出すために。

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2023/04/01 14:21
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