Product-Led Growthとは?SaaS慣れしてない人のために徹底解説

  • | 公開 2021年03月30日
SaaS
Product-Led Growthとは?SaaS慣れしてない人のために徹底解説

いつも見て頂きありがとうございます!「エンプレス」の編集部:fukuyamaです。PLGはプロダクト開発をしている会社さんにとっては、覚えておきたい重要な情報。

「PLG(Product-Led Growth)って何のこと…?」

IT業界では、たくさんの横文字が出てきますよね、そしてPLGは会社成長のために必要な戦略を意味しています。

特にインターネット上で、サービスを簡単に受けられるソフトウェア(SaaS)を作っている会社さんにとっては、売上を高めていくためにも重要な情報。

PLGの最初のPはプロダクトを指しており、これが重要な役割を担っていくので、必要な情報を私と一緒に見ていただけると嬉しいです。

見て頂きたい人は?
・SaaS慣れしていない方
・プロダクトを作っている会社の方
・これからSaaSについて知識を増やしていきたい方

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PLG(Product-Led Growth)とは?

Product-Led Growth(PLG)とは、営業・マーケティングなどの企業活動を全てプロダクト内部で行えるようにして、余計なコストを払わず成長のためにリソースを集中させる戦略のこと。

今までプロダクト(主にSaaSのこと)を売り込むためには、営業・マーケティングなどプロダクトが直接関わらない外側の施策によってリードを獲得し、商談や受注を増やして成長させていく方法が一般的でした。※ 外部の施策とは対面営業・訪問営業・広告・オウンドメディア・チラシなどのこと

しかし、PLGの考え方はプロダクトが営業マンでもありマーケターでもあり、プロダクト自身によってプロダクトが売り込まれる自然な成長を目指すための戦略となります。

成長のさせ方の違い
Sales-Led Growth   → セールスでプロダクトを売る(営業主導)
Product-Led Growth → プロダクトでプロダクトを売る(製品主導)
Community-Led growth → コミュニティでプロダクトを売る(コミュニティ主導)

あまり聞かない言葉だから新しい概念かな?と思いきや、実は昔からPLGを実践してきた会社さんは多く、Zoom・Slack・PinterestなどがPLGを元に急速な成長をしてきた代表的なプロダクト。

細かい方法はあとで詳しく書いていますが、プロダクトによって見込み顧客を増やし~満足度を高め~顧客化させる体験や仕組みを入れ込み、ファンが広がるバイラル性によって売上を伸ばしていくのがPLGです。

認知を高め、リード(見込み顧客)を獲得し、ナーチャリング(有料プランへの引き上げ)もやってくれるなんて、凄すぎます。

このような思想のプロダクト作りによって、様々なメリットを受ける事ができ、実際PLGによる成長企業が多数存在しているため、注目の戦略となっています。

注意事項
PLGは製品主導ですが、企業目線の製品主導ではなく、あくまでも顧客と真摯に向き合うための製品主導です。意識は必ず顧客へ向いており、製品の売り方を変えるのがPLG。

PLGの構造

「プロダクトがプロダクトを売ってくれる。」と聞いても、あまりイメージできませんよね? 私もこれを聞いた時は「え?どういうこと?」と、はてなマークがたくさん付きました…。

もっとイメージしやすいように、比較した図を作ってみたので、一度見てほしいです。

SLG(Sales-Led Growth)とPLG(Product-Led Growth)を構造化して比較した図解

SLG(Sales-Led Growth)
営業 + マーケティング + カスタマーサクセス
開発 + プロダクト
が分かれている状態。

PLG(Product-Led Growth)
プロダクトの中に
営業 + マーケティング + カスタマーサクセス + 開発
が含まれている状態。

これの何が違うの?と思われるかもしれませんが、例えばSLGの場合は営業は営業・マーケティングはマーケティングなど、それぞれが独立した考えや方針を持ってしまい、プロダクトとの関係性に隙間が生まれやすくなります。

しかし、PLGのように会社活動の中心にプロダクトを配置することで、意識を一点に集中させて大きな力を生み出すことができます。

数人であれば効果は薄いですが、会社に所属する全ての人が一点に向かって突き進んでいければ、どのくらいすごいエネルギーになるのか計り知れません。

スタートアップやベンチャーなら特に、急激な成長を目指しているはずなので、力を分散させるより一点に集めた方が余計なコストもかからず成長も早くなります。

見込み顧客~顧客化までの流れ

今までの営業主導(SLG)と、今人気を集めている製品主導(PLG)では、お客様とどのような繋がりの持ち方になるのか。

ここ、かなり重要なポイントなので、分かりやすく図で表しています。

今までの営業主導(SLG)と、今人気を集めている製品主導(PLG)の違いを分かりやすくした図解

参考:兆速成長するスタートアップの凄い秘密:Product-Led Growthという名の成長戦略

最大の違いは、実際に試してもらうまでの時間の長さ。

SaaSなどのプロダクトは、業務効率化・生産性向上のメリットを感じられますが、それよりもプロダクトの扱い方が簡単で、尚且つ課題解決も楽にできるからこそ、みんなに使ってもらえている状態でもあります。

しかし、その使い心地は実際に使ってもらえなければ分からないため、なるべく早い段階でプロダクトを試してもらう流れを作るのが製品主導のPLG。

今までのように営業・マーケティングによるリード獲得からインサイドセールスに回しても、時間とコストが掛かる上に他社製品へ乗り換えもしやすく、マーケティングプロセス自体がプロダクトと合っていない状態でした。

状況によっては費用対効果が悪い状態だった流れを、製品主導のPLGに変える事で、顧客化(有料プランへの引き上げなど)を最速で行えます。

まず初めに「使ってもらう」から始まるのがPLGです。

人数も作業量も多い、現場スタッフさんに早く使ってもらうことが勝負のカギになる。(たとえばBtoB製品だとしてもBtoCとして考える)

今までの営業・マーケティングはどこにいったの?

プロダクトを試してもらえるまでの時間を短くするのはいいとして、今まで行ってきた営業・マーケティングに関しては、どこにいったのでしょうか。

PLGの概念から言えば、プロダクトの中に営業・マーケティング要素が含まれており、プロダクトを使ってもらえるほど影響を発揮していきます。

自社スタッフさんが直接対応しなくても、プロダクトを使ってもらえるだけでその効果が高まっていく。

非常に効率的な営業・マーケティングが行えるため、人件費の削減やマーケティング予算の圧縮などもできます。

少しのことで大きな変化を生むからこそ、戦略と言えるのだと思います。

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Product-Led Growthの概念が支持されてきた背景

営業主導のSLGより、製品主導のPLGが支持されてきた背景に、時代の流れが大きく関わっています。

昔は長年勤めた人(年功序列)や社長など会社のトップのみに権限が持たされていることが多く、現場の意見よりも俗に言う「鶴の一声」によって何もかもが決められていました。(現代でもありますが…)

しかも、接待(ゴルフ・麻雀・会食など)の満足度によって、決定が下されていたこともある。

そんな状況で決められた製品は、導入してもトラブルが起きる予感しかありませんよね?

  • 現場が求めている機能がなかった…。
  • 上が決めたことだから従うしかない…。
  • 切り替えたくてもコストがかかる…。

現場を知らない人が意思決定したことによる弊害です。

「プロダクトに関係ないところで行われる営業が悪い」と言い切れませんが、実際にプロダクトを使う人以外によって決定が下されることが多い営業主導では、誰も幸せになれない場合も多い。

だからこそ現場のスタッフさんによる判断・権限を強める、製品主導の売り込みが支持されてきています。

BtoBがBtoCになっていく?

製品主導のPLGで成長させていくなら、BtoBの企業対企業のイメージよりも、BtoCの企業対個人のイメージの方が近くなるかもしれません。

例えば業務効率化が可能なSaaSプロダクトを導入する場合、

人材人数単純作業権限
経営者1人少ないある
リーダー層複数まぁまぁまぁまぁ
一般層多いたくさんない

この3つであれば、普段使いになっている人数も多い、一般層の現場スタッフさんに合ったSaaSであれば、効果も高くなりますよね。

人数も作業量も多い組織(またはチーム)にSaaSを取り入れることで、業務効率UP・生産性UPが可能となります。

しかし、本当に必要としている人たちが導入の決定権を持たされておらず、ここで導入決定者と現場のギャップが発生。

営業主導であるBtoB思考は弊害が起きやすく、製品主導であるBtoC思考で現場スタッフさんに本来の導入決定者へなってもらうことで、プロダクト本来の効果を発揮させることができます。

営業主導(SLG)のBtoB思考と製品主導(PLG)のBtoC思考の違い
  • 現場に合うため長く使ってもらえる
  • 効率化と生産性のUPでモチベーションは高まる
  • 継続期間が長くなるので乗り換えにかかるコストが発生しない

製品主導のBtoC思考へ切り替えるだけで、会社成長が促されていくんです。

今までの営業主導とこれからの製品主導の違い

向き合いたいお客様・課題・市場によっても変わりますが、製品主導のPLG戦略を取る会社さんは多くなる気がします。

なぜそう言えるのか、過去・現在を営業主導とし、未来を製品主導として表で簡易的に今後を踏まえた状況をまとめてみました。

導入までの流れ

導入までの流れ導入提案導入決定者導入方法
過去営業経営者オンプレミス
現在営業・マーケティングリーダー層クラウド
未来プロダクト現場スタッフクラウド

開発

開発開発コスト開発期間
過去莫大長い
現在高い短い
未来安い短い

導入

導入学習コスト(顧客側)顧客獲得コスト(開発側)
過去高い安い
現在低い高い
未来低い激高

この中でも注目しておきたい未来ポイントは2つ。

  • 開発コストが下がる
  • 顧客獲得コストが上がる

テクノロジーが進歩すればするほどプロダクトが作りやすくなり、競合がたくさん増えていく関係で顧客獲得コストが上がり続ける。

そのため、今までのように営業担当者の人件費や、広告・オウンドメディアによるリード獲得コストを増やしてしまうと、コストが見合わなく恐れも。

SaaS会社として厳しい戦いが目に見えているため、スタートアップに関してはPLG戦略をとり、プロダクトによって顧客を増やす仕組み作りが定石になると予想されます。

営業主導はプロダクトの価格が高くなりやすい?
営業さんを何人も雇えば、それだけコストが高くなりやすく、プロダクト自体の価格も高くなり利益を落とす場合も。また、給料インセンティブなどによってもコストが増えやすくなります。

時代の流れも大きく影響

2020年前後から始まった大規模なウイルス感染により、人の行動は変わりました。

リモートワークが定着し、オフィスに出社しないで仕事をすることが一般的になってきたため、組織の在り方も変化。

行動の多くをインターネット上へ置き換える必要も出てきたため、SaaSなどのプロダクトを活用し個人個人の働き方を企業としても支援しなければいけない状況です。

今までこれから
・オフィスに出社して仕事をする
・リアルな対面の場で誰かに教わっていた
・誰かに説明されないと分からなかった
・自宅で仕事をする
・オンラインで教わるようになる
・自分で学んで覚えていきたい(聞くのが面倒)

仕事の多くが個人活動前提となるため、SaaSの重要性が高まり製品主導による営業・マーケティングが必要となっていきます。

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Sales-Led Growth の問題点(デメリット)

営業・マーケティングによるリード獲得で売上が大きく変わる営業主導(SLG)は、BtoBビジネスにとっては非常に強力な販売手法です。

しかし、導入した際のミスマッチによって解約が続いたり、継続した関係性が築けない場合もあるため、営業主導の問題点(デメリット)をまとめてみました。※ 下記の流れは一つの例として掲載

営業主導(SLG)の問題点(デメリット)

現場スタッフ以外の承認で導入が決まってしまう

本当に使いたい人が使いたいプロダクトを選ぶのではなく、会社同士の付き合いや営業マンの印象や熱意で決められてしまう。

また、頑張って説明をしてくれたり、先に何か価値を提供してくれると、その想いに応えたくなる。

しかし、実際に使う人とプロダクトの関係性を置き去りにした導入は、後々さまざまなトラブルを生んでしまいます。

プロダクトの価値を感じる前に契約してしまう

一番の問題は、プロダクトに対して価値を感じる前に、導入が進んでしまうこと。

例えば、ホームページを隅々まで確認し、ホワイトペーパーを読み込み、営業担当者から説明をみっちり聞き、デモを借りて試し、他社との操作比較など行ったとしても、短時間ではそのプロダクトを本当に使うべきかどうか決めきれないことはありませんか?

だからこそ口コミに頼ってしまいがちに
決定の基準が分からないため、第三者の評価を当てにして導入を決定することも多いですよね。しかし、第三者の評価は、その方の状況だからこその評価なので、状況が似ているだけで自社の状況と同じではないため、ミスマッチを発生させます。何か不確かな情報で導入が決定されてしまうため、使う価値があるかどうか分からないまま「契約」されてしまう状況が増えてしまうんです。

また、営業主導(SLG)だと、短時間で契約~導入まで進んでしまうことで、弊害が大きくなることもあります。

サポートコストがかかる

もし、価値を感じていない状況で契約と導入が進んでしまうと、こんな状況が起きる可能性もあります。

  • 現場スタッフの不満が増える
  • やらされ感があってモチベーションが下がる
  • 詳細を分かってない状態で導入が進むため混乱を生む

価値を感じる前に導入が進むことで、実際にプロダクトを使ってくれる現場スタッフの方々は、かなり受け身で文句ばかりが増えてしまう場合も。

そうなってしまったら、導入を決定した側の普及活動や、プロダクト会社からのフォローも増えてしまい、余計なサポートコストが両社で発生するため、考えていたよりマイナスを生んでしまいます。

引き止めコストがかかる

価値を感じる前に現場で一気に使われてしまうため、不平不満が大きくなりやすいです。

しかも、本当に求めていた機能や、課題の解決ができないプロダクトだった場合、すぐにプロダクトの乗り換えを考えられてしまい、解約(チャーン)防止に対する余計なコストがかかってきます。

解約防止は、売上を新たに生む行為ではなく、被害を最小限にとどめようとする攻めより守りなので、どんどん対応が後手後手にもなってしまう。

スタートアップとしては右肩上がりの成長を求めたいのに、引き止めにかかるコストが邪魔をしてしまう場合もあります。

無理にキャンペーンを適用させる

解約を防ごうとして、プラン料金を一時的に下げたり、無料期間を適用させて引き止めを行っても、一時しのぎにしかならず結局は解約されてしまうことも多いです。

この場合は、安くしたうえで結果的に解約へ繋がるため、売上が下がるだけでなく、無駄なリソースを使ってしまっている状態。

プロダクトの価値を身をもって感じてくれている場合は、このような引き止め施策を行う必要がないほど、継続して利用頂けます。

コスト削減の際、真っ先に解約リストに入れられてしまう

企業に導入されるSaaSプロダクトは年々多くなっています。

リモートワーク(在宅勤務)が一般化しつつあるため、インターネット上で作業や管理をする必要性があり、どこも何かしらのSaaSを使っている状態。

しかし、費用対効果や現場とのフィット感など、価値を感じられていない状態が続いていると、真っ先にコストカットの対象にもなってしまう。

日々新しいSaaSも生まれており、利用料を既存SaaSよりも下げた戦略をとる会社さんも多いため、乗り換えられてしまいます。

顧客に切り替えコストを払わせてしまう

解約が発生したのであれば、それは導入会社さんの事情が変わったのか、価値を感じてもらえないまま導入したことによる弊害なのか、このどちらかと思います。

例えば導入にあたり初期費用なども頂いていれば、プロダクト開発側としては利用料も合わせて利益はとれたかもしれませんが、結果的に解約となれば、導入してくれていた会社さんは切り替えのコストを捻出しなくてはならず、これがマイナスブランディングとして働いてしまう。

価値を感じる前に導入を進んでしまう営業主導のプロダクト売りは、結果的にデメリットが発生する場合もあるんです。

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Product-Led Growthの利点(メリット)

製品主導(PLG)の「プロダクトがプロダクトを売ってくれる」状態が作れると、余計なコストをかけず倍々に成長させていくこともできます。

どのようなメリットがあるのか、製品主導の流れ(一例)を見てみたいと思います。

製品主導(PLG)の利点(メリット)

営業をかけずともプロダクトを試してもらえる

製品主導(PLG)は見込み顧客~顧客化までの流れで図式化しているように、プロダクトをまずは試してもらう仕組みを入れることで、プロダクトの外側で行う営業活動の割合を少なくできます。

もし営業前提の売り方だと、営業先を見つけて電話をしたり、リード獲得後のナーチャリングで関係値を作ってから商談へ移すプロセスによって、チャンスを逃している状態に。

やっとこさプロダクトの紹介や商談機会をもらえたとしても、

  • 他からも営業を受けている
  • 他プロダクトを試し始めている
  • 試した中で導入プロダクトを決めようとしている

すでに顧客の中では導入プロダクトが決まっている場合もあります。

通常の営業・マーケティングのプロセスだと遅いと言えるため、プロダクトをまずは利用してもらう製品主導の売り方がポイントになっています。

価値を感じてもらった上で契約・導入が進む

実際にプロダクトを試してもらうことで、自分たちにとって本当に必要な機能はあるのか?業務フローの中に組み込めるか?今の課題が解決できるか?これらを確認することができます。

価値を感じるからこそ、誰か別の営業さんが説明をしなくても、スムーズに有料プランへ入ってくれたり契約が進む。

今まで見込み顧客を探すのに時間を使い、商談までいくのに時間を使い、契約のためのクロージングで時間を使っていた全てが、事前にプロダクトの価値を感じてもらうことで不要にもなる。

製品主導(PLG)で進めると、大幅に無駄なリソースやコストを使わないのに、結果が出るようになります。

アップセルがしやすい

製品主導(PLG)は、フリーミアモデル・一定期間のトライアルなどお金が掛からない状態で試してもらうのですが、一般的に考えれば無料プランから有料プランに引き上げるのは難しいですよね。

しかし、プロダクトの価値を実感しており、さらにメリットが受けられるのであれば、自然と金額が高いプランにも入ってもらいやすくなる。

価値を感じてもらうことで不信が信頼へと変わっており、営業で必要な信頼づくりがプロダクト自体で行われるため、アップセルがしやすくなります。

自ら学んでくれる

プロダクトに価値を感じてもらえている状態は、顧客にとって成功体験を生んでいるとも言えます。

徐々に成功体験をプロダクトによって得られると、受動的な受け身の意識ではなく、モチベーションが高まるので能動的に自らさらに良くなろうとする。

メール・電話・オンラインMTGなどせずとも、マニュアルやノウハウを掲載しておけば、その情報を確認してくれるため、顧客自ら知識を得ようとサポートの必要性が減っていきます。

今までかけていたサポートコストを圧縮でき、さらに開発へリソースを回せるので、良い循環を作ることもできます。

解約率が低い

前提として契約の前に、プロダクトへの価値(信頼など)を感じており、現場で使えることを確認した上で導入しています。

そのため、導入後のトラブルは少なく、何も心配せずとも業務フローの中に取り入れることができるので、自然と解約率も低くなる。

特に、日常業務をSaaSプロダクトで代用させるため、一度日常的な使われ方さえすれば、改めて切り替えるのも難しくなります。

自社リソースをプロダクト開発に集中できる

営業主導(SLG)のように、多額のコストを支払って営業・マーケティング・カスタマーサクセスなどを行った上で契約を獲得していたものを、プロダクト内に組み込むことで自動化させることができます。

営業を自動化すれば、その分リソースを空けられるので、さらにプロダクトを磨くために使えるようになる。

さらに利用者を増やせる

プロダクトに磨きがかかれば、さらに利用者も増えていくため、右肩上がりの成長を目指すことができます。

  
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なぜProduct-Led Growthではフリーミアモデルが必要なのか?

製品主導(PLG)を推し進めていくには、プロダクトをどれだけ早く試してもらえるかがカギ。

登録するのにわざわざプロダクトの開発会社へ一度連絡を取る必要があったり、手間がかかるフローになっていると、使ってもらえる確率が低くなっていきます。

そのため、フリーミアモデル(完全無料で一部使える)・無料トライアル(一定期間、一部機能が使える)の形にして、見込み顧客にプロダクトを「すぐ」に「無料」で試してもらうのが必要だと言えます。

例えば見込み顧客が抱えている課題は同じだとしても、

  • それぞれ企業内の状況は違う
  • 試すのに上司の決済を取らないといけない

試すことに対して、少しでも障害があればいつまで経っても使ってもらえません。

だからこそ、フリーミアモデルの形態をとり、見込み顧客が少しでも試しやすい状況を作るのが、製品主導では大切です。

フリーミアモデルが合わないプロダクトもある?

無料でプロダクトを提供すると、最初はなかなか売上が作れず「本当にやっていけるのかな?」と不安にもなりますよね。

例:月額100万のプロダクト

この場合、1件の契約が大きいため、無料提供するフリーミアモデルは逆効果となり、営業・マーケティングなどを駆使して、売り込みに行った方が契約確率は高くなります。

例:月額1万円のプロダクト

しかし、1件の契約は少額でも10人が無料で試して1人本契約、100人が無料で試して10人本契約のように、使ってくれる人数が増えるほど効果を増すのがフリーミアモデル。

チャットツールのSlackや、ビデオ通話のZoomなどは、どちらも無料で一定範囲使えますが、獲得可能な市場が大きいからこそ、無料で提供しても価値を感じて有料プランへしてくれる人が一定数いるため、売上を作れています。※ 獲得可能な市場の大きさをTAM(Total Addressable Market)と呼びます。

もう少し情報を簡単にして表でまとめてみました。

項目営業主導製品主導
利用者少ない多い
金額高い安い
提供方法有料無料

状況によってはフリーミアモデルが合わないプロダクトもあるので、実行前に自社の特性が製品主導(PLG)に合うのか、確かめて頂くのがオススメです。

フリーミアはなぜ人気?
BtoBだと数百万社しか相手にできませんが、BtoCの視点で現場スタッフさん向けにプロダクトの利用を勧めた場合は数千万人を相手にできるためスケールさせやすくなります。

Product-Led Growthの事例

製品主導(PLG)によって、大きく飛躍している会社さんはたくさん存在しています。

  • Slack(チャットツール)
  • Zoom(ビデオ通話)
  • Notion(情報共通ツール)
  • Miro(オンラインホワイトボード)
  • Pinterest(画像共有ツール)
  • Shopify(ECサイト)
  • Trello(プロジェクト管理)

例えばSlackやZoomなどは、あなたも使ったことがありませんか?

特に面倒な手間は不要で、すぐに使えて難しい操作もなく仕事に取り入れることができたと思います。

どのプロダクトもフリーミア・期限付きのトライアルを設けており、さらに誰かと一緒に使うことで、その存在や利用者を増やしてきました。

例として、それぞれのジャンルで見込み顧客がどのような動きをしているのか、見てみたいと思います。

チャットツール:Slackの場合
① 無料でツールに登録
② 色んな人と繋がりやすくなる
③ 日常業務で必要不可欠となる
④ さらに高度な機能を使うために有料プランへ
⑤ 継続して使う

ビデオ通話:Zoomの場合
① 無料でツールに登録
② 社内外の人とオンラインで繋がる
③ 日常業務で必要不可欠となる
④ さらに高度な機能を使うために有料プランへ
⑤ 継続して使う

タスク管理:Trelloの場合
① 無料でツールに登録
② 個人だけでなく組織で使いだす
③ 日常業務で必要不可欠となる
④ さらに高度な機能を使うために有料プランへ
⑤ 継続して使う

どれも通る道はほとんど同じで、

フェーズ感じる価値詳細
第一段階無料無料で登録して使える
第二段階共有一人ではなく複数人で使うようになる
第三段階日常日常的な利用ツールとなる
第四段階成功成功体験によって信頼を得て有料プランへ
第五段階安心価値を感じているからこそ継続

これらはプロダクトの中で営業・マーケティング・カスタマーサクセスが行えているからこそ、利用者が倍々に増えて有料プランへの加入も加速度的に広がっています。

特に、第二段階の「共有」では、相手も無料で登録ができたり、URLを共有するだけで利用ができると、その成功体験を自らも得ようと思って利用が広がっていく。

プロダクトにバイラル性を組み込むことで、自然な形で成長を促していけるのが、製品主導になります。

フリーミアモデルじゃなくてもPLGは実践できる?

一定範囲の機能を使うのに、無料で使えるフリーミアモデルは、誰もが使いやすく効果を実感しやすい。

また、その必要性が分かっていなかったり、存在自体を知らなければ、「まず使ってもらう」PLG戦略をとるのが難しいと言えます。

しかし、フリーミアモデルがPLGで最善かと言えば違くて、製品手動で利用者さんをどんどん増やしている会社もたくさんあるんです。

フリーミア以外の例

例)電子契約ツール
お客様から送られてきた電子契約を使った際に、完了画面に利用を促すメッセージが入っている。この場合は、お客様からSaaSを紹介された形となる。

例)webアンケートツール
回答後にwebアンケートツールの利用を促すメッセージを見せる。数百・数千人といった回答者が利用するため、それだけでも数百・数千万円分の広告効果を生み出します。

例)オンラインストレージ
利用するための容量を増やす「友人紹介プログラム」があり、誰かを誘ってその人が使い始めるほど、使える容量が一時的に増えていく。自分のメリットのために、利用者自らが営業となって動いてくれる。(もちろん相手にもメリットがあること)

社内はもちろん、社外と繋がる機会を見逃さず、使えば使うほど「認知」が増えていく仕組みを作ります。

もし、プロダクトの品質が高ければ、良い印象が高まっていき、そのまま自然と使う流れにもできる。

顧客との接点を見極め増やし、自然な広まりを作れるなら、フリーミアである必要もないかと思います。

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Product-Led Growthを実行するための7つのポイント

製品主導(PLG)の特徴やメリットが分かったら、実際に何をすればいいのかを考えてみたいと思います。

重要なポイントとしては以下の7つ。

  • 対象人数の多さ
  • 市場の学習コスト
  • 導入のしやすさ
  • 価値を感じるまでの経過時間
  • 頻度
  • コスト
  • バイラル性

プロダクトがプロダクトを売る状況を作ることを前提として、各説明を入れています。

対象人数の多さ

プロダクトを使ってくれる人が多ければ多いほど、製品主導の効果は高まります。

これはプロダクトに関わらず、どんな製品・サービスにも言える事ですが、製品主導の場合はフリーミアモデルを採用するパターンが多いため、何よりも対象人数の多さが大切。

フリーミアでなくとも、間接的に利用する方が多い場合も同じく、未来のお客様との接点を見逃さないのがポイント。

市場の学習コスト

市場を考える際に、レッドオーシャン・ブルーオーシャンの単語は必ず出てきますよね。

製品主導ではこれらの市場状況も考える必要があります。

レッドオーシャン
・競合他社が入り乱れている戦国時代のような状況
ブルーオーシャン
・競合相手が少ない状態なので市場を独占しやすい

一般的に考えれば、競合相手がいないブルーオーシャンの方がいいと言われていますが、その分認知を広めたり、使い方を学んでもらうコストがかかりやすい。

それは、誰かが情報を伝えて、教え込む努力が必要と言えます。

しかし製品主導の戦略を取るのであれば、プロダクトの使い方がすぐに分かり簡単であることが大前提であるため、ブルーオーシャンのような新しい情報を地道に普及させる状況では効果は発揮しづらいこともあります。※ 顧客自身が選択・理解して利用が進むことをセルフサーブと呼びます。

レッドオーシャンだと競合はたくさんいるけど、使い方などの情報がすでに広まっている状況なので、新たな学習コスト不要で使うことができる。

そのため、製品主導で進めるには、レッドオーシャンのような市場が合う場合も。

導入のしやすさ

まずは試して使ってもらうことから始まるPLGは、使うことに対しての摩擦やハードルを限りなく無くすことが大事です。

  • 社内稟議を通さなくてはいけない
  • 営業担当者の話を一旦受けなければいけない
  • 一度ホワイトペーパーをダウンロードしなければいけない
  • 無料期間が過ぎれば自動的に有料になってしまう
  • 非常に複雑な操作が必要になっている

などなど、実際に使うまでに数々の心理的ストレスや手間が発生するフローになっていると、それだけでPLGがうまくいかない。

どれだけ「楽」に「簡単」に「すぐ」使い始められるか。

導入のしやすさを最大限高める必要があります。

価値を感じるまでの経過時間

営業主導の場合は、営業担当者と話したり、ホワイトペーパーをダウンロードした後の定期的な連絡で信用を作ってから再度商談へ進み、やっとプロダクトを使ってもらうまでにたどり着く。

しかし、これだとプロダクトをどんなに磨いても、品質を良くしても、価値を感じてもらうまでに時間がかかりすぎます。

導入のしやすさは当然として、プロダクトを使って価値を感じてもらえるまでの時間を、いかにして短くできるかが重要。

スタートアップではプロダクトに磨きをかけていると思うので、その状況を考えても先に使いだしてもらえる方が嬉しいですよね。

価値とは?
課題の解決、使い勝手など、人によって感じる価値は違いますが、プロダクトのファンになってもらうことが価値だと考えると分かりやすいと思います。

頻度

月に1回しか使わないプロダクトより、毎日使うプロダクトの方が重要性は高い。

使われる頻度によっても、製品主導の成否は変わってきます。

例えば、月に1度の「プロダクトがプロダクトを売ってくれる」状態よりも、月に何度も「プロダクトがプロダクトを売ってくれる」状態の方が売上は増えやすい。

使われる頻度によっても、売上が大きく変わってくるため、PLGの場合は頻度の多いプロダクトとの相性が良い状況です。

コスト

PLGにするなら、値段の設定も重要です。

製品価格が高ければ、たとえフリーミアモデルにして無料で使ってもらったとしても、実際に導入するためのフローで時間がかかります。

導入のしやすさでも軽く触れていますが、社内稟議を通すために色々な人へ説明したり、上司や社長へ導入プレゼンをする場合もある。

値段設定によって、導入するまでの経過時間を増やしてしまう恐れもあるため、成長を遅くさせる高額な値段設定はPLGでは合わないことも多いですが、合理的な金額判断ではなく、感情的な高感度をPLGで高めているのであれば、値段が高くとも使ってもらいやすくなります。

バイラル性

バイラル性とは、何かを通じて爆発的に広がることを指し、製品主導ではこの性質を作りだすことが大切です。

例:Zoomの場合
使うためにはビデオ通話をしたい相手へルームのURLを送りますが、プロダクトを使う度に誰かへ情報を共有し、共有された人物が同じようにその行動をとっていくと、倍々で利用者を増やしていける。

例:Slackの場合
チャットメッセージが簡単に使えて、チャンネルで多人数と話すこともできるため、連絡のしやすさから他の人をどんどん招待して用者を増やす行動を、自然な形で発生させている。

使えば使うほど、利用者が増えるほど、学習コストが下がり、使い始めやすくなる。

「プロダクトがプロダクトを売る」とは「プロダクトの利用者が他の人を巻き込み利用者を増やしていく」ことでもあるので、バイラル性をプロダクト内に組み込めば、営業・マーケティングとしての機能を持たせることもできます。

最後に。

製品主導(PLG)が当たり前の世界になったら、それこそ開発力がもっと高いレベルで必要になってくると思います。

例えば企業が新規事業としてプロダクト開発を進めようとすれば、片手間になりやすい状況なので最初から勝負が見えている場合も…。

戦略一つで売上が大きく変わってしまうのも、すごく勉強になります。

Product-Led Growth(製品主導)以上の戦略も、すぐに出てくるかもしれないので、今後もSaaS市場からは目が離せませんね。

著者:エンプレス編集部 fukuyama(運営会社ファングリー
住所:東京都渋谷区南平台町15-13 帝都渋谷ビル5F
2018年よりマッチングプラットフォームを運用支援。事業譲渡後は資料サービス「エンプレス」にて、お客様支援のために外部パートナーと協力する傍ら、自らもコラムを執筆して日々有益な情報発信に努め、すでに200万字を突破。
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