
いつも見て頂きありがとうございます!「エンプレス」の編集部:sugiyamaです。製造業の方は、どのようにすれば良いホワイトペーパーが作れるのか、考え方やコツをまとめています。
「展示会に行っても、なかなか新規顧客が増えない…」
「ウェブサイトからの問い合わせが全然ない…」
「見込み顧客を増やす施策がことごとく失敗…」
あなたが製造業のマーケティング・営業、あるいは経営に携わっていて、このような課題にぶつかっているなら、その解決策の一つとしてホワイトペーパーが考えられます。
しかし「ホワイトペーパーって何?」「どうやって作ればいいの?」と思ったかもしれませんね。
この記事では、製造業におけるホワイトペーパーの作り方を、専門的な知識がなくても背景から深く理解し、今日から実践できるコツまで、わかりやすく徹底的に解説していきますので、参考になれば幸いです。
なぜ製造業にホワイトペーパーが必要なのか?
「うちの会社は、これまで通りで大丈夫だ。」
「展示会や今の営業活動でなんとかやれている。」
「今の方法で受注もできている。」
基本的に、みなさまこのように考えられているかもしれません。
しかし今は、企業の情報収集方法と意思決定のプロセスが大きく変化しており、見過ごせない状況になっています。
この変化に対応するのか、それとも今までの方法を貫き通すのか。
これは、事業の将来を左右する大きな分かれ目にもなっています。
では、一体どのような変化が起きているのか、そしてその変化へ対応するには、なぜホワイトペーパーが欠かせないなのか、大きな3つの流れを確認してみましょう。
製造業における顧客の変化とは
① 顧客の情報収集方法が変わった
デジタルがなかった時代は、新聞・テレビ・ラジオなど、情報収集の場が基本的に限定された媒体のみでした。
他にも、新しいサプライヤーや技術を探すといえば、展示会を訪れたり、商社からの紹介を待ったりすることが一般的だった。
しかし、今や新しい技術や製品を探す担当者は、まずインターネットで気軽に情報を集めることから始めるようになり、情報収集の主戦場がオンラインへ移行しています。
インターネットで探す時のキーワード例
「〇〇部品 コスト削減」
「△△技術 導入事例」
「□□システム 生産性」
このように具体的なキーワードで検索し、自社の課題解決に役立つ情報を探します。
仮にこのタイミングで、あなたの会社のウェブサイトを見つけてもらえなければ、そもそものチャンスを失うことにもなる。
さらに令和時代では生成AIの発展が目覚ましく、OpenAIのChatGPT(チャットジーピーティー)や、GoogleのGemini(ジェミニ)などよって、わざわざ検索ブラウザで特定のキーワードから探さなくても、簡単なキーワードを入れるだけで知りたいことが、瞬時に返ってくる。
むしろキーワードではなく、「こういった情報を知りたいのだけど?」と、会話形式で必要な情報を瞬時に網羅的に回答してくれます。
検索ブラウザも生成AIも同じく、インターネット空間が使われているため、この場所で情報発信をしていなければ、見込み顧客との接点がますます減ってしまう状況になりつつあります
② 見込み顧客との接点が激減
「① 顧客の情報収集方法が変わった」にも繋がるのですが、お客様はインターネット上で自分が知りたい情報の多くを手に入れられる状態です。
つまり、情報収集はお客様自身で手早く済ませて、早い段階で比較検討へ進んでいるとも言える。
この状況はかなり製造業として不利なのも、自社の魅力や技術力をきちんと伝えられる前に、検討が進められてしまうため、何もできずに終わってしまうのです。
また、本来であれば情報を探す過程で、自社のオウンドメディア(公式サイトやブログなど)を見に来てもらうのが見込み顧客と出会えるチャンスでもあったのですが、生成AIの大頭によって知りたいことが瞬時に完結できるようになり、それによってオウンドメディアへの流入も激減。
見込み顧客との接点が限りなく減ってしまう状況が出来上がりつつあります。
③ リードタイム(検討期間)が長い
製造業の取引は、一度サプライヤーを決めると、数年、場合によっては十数年にわたって続くことも珍しくありませんよね。
なぜなら、製造ラインの変更には、多額の費用と時間、そして生産停止など大きなリスクが伴うものだから。
そのため、顧客はとても慎重に検討して、「品質に関わるからじっくりと判断したい…」とすぐに導入を決めることはない。
たとえばこの期間にあなたの会社が、見込み1社だけの対応をしていると、仮に受注できなかった場合は、また新たに見込み顧客から見つけて長い検討期間を挟みます。
その場合は売上も作れず製造ラインも動かせず、かなりまずいことにも。
リードタイムが長いからこそ、常に見込み顧客との接点を作り、商談へ進める状況を作る必要があります。
製造業にホワイトペーパー制作が必要な理由
ホワイトペーパーは、顧客との接点はもちろん、検討期間中など継続的に情報を提供し続けることで、「この会社は、いざという時に頼りになる」。
こういった好印象を与え、「いつか課題が起きたら、この会社に相談しよう」と思ってもらうための重要なツールとなります。
基本は、オンラインによる情報収集の段階で、顧客との接点を作るための入り口となりますが、あなたの会社のウェブサイトや、製造業向けの専門サイトにホワイトペーパーを掲載することで、24時間365日営業活動をしてくれるため、営業時間や地理的な制約に縛られる展示会では絶対に不可能なことです。
顧客から承認が得られるまでが長いため、その間にも営業・マーケティング活動を行い、常に見込み顧客を増やし続けるために、ホワイトペーパーは製造業にとって必要なマーケティングツールと言えます。
製造業のホワイトペーパー作成の心構え
「うちにはマーケティングの専門家がいないから…」と諦めていませんでしたか?
ホワイトペーパー作成の成功は、専門知識よりも、その目的と役割を正しく理解することにあります。
もちろんデザイン的なスキル・テクニックは求められますが、それ以上に大事なことがあるため、ホワイトペーパー作成へ取り組む前に、知っておいてほしい心構えを2つに絞りました。
専門家対専門家の「対話」を意識する
通常のBtoBビジネス向けホワイトペーパーでは、「課題を抱える顧客」に対して、「それを解決する専門家(自社)」として、情報・知識をわかりやすく伝えることが多いです。
ここでいうBtoBビジネスとは、専門知識・技術がない側が、専門知識・技術を持っている側へ相談をすることで成り立つビジネスのこと。
しかし、製造業におけるサプライヤー探しは、通常のBtoBビジネスと考え方が違ってきます。
製造業における考え方
顧客:自社の製造ラインや製品・関連技術に詳しいプロフェッショナル
自社:特定の技術や製品に特化したプロフェッショナル
つまり、専門家対専門家の構図なのです。
だからこそホワイトペーパーは、単なる製品紹介で終わらせるのではなく、「もう一人の専門家と深く議論するための基礎資料」と位置づける必要があり、この意識を作成段階から持つことで、内容の深さと信頼性の向上に大きく貢献します。※ 製品一覧資料(製品カタログ)もホワイトペーパーの位置づけ
補足
専門家である顧客は、表面的な情報ではなく、技術的な根拠や具体的なデータ、導入事例などを求めています。そしてホワイトペーパーに書かれた内容を見て、それが自社の複雑な製造プロセスに適用できるかを判断します。この「専門家対専門家」の意識がなければ、あなたのホワイトペーパーは、顧客のニーズに応えられず、ただの情報に埋もれてしまいます。
「完璧」を目指すのではなく「まず作ってみる」
多くの製造業企業がホワイトペーパーを作れない最大の理由。
それは完璧を求めすぎるから。
あなたも、こんな考えを持っているかもしれませんね。
「作るのならバッチリ作りたい!」
「顧客が十分満足するものを作りたい!」
「商談に繋がるよう情報をいっぱい詰め込みたい!」
しかし、完璧なデザインや構成を追い求めると、制作にたくさんの時間と費用がかかるのですが、その間に顧客のニーズは変化したり、せっかくの情報が古くなってしまうリスクもあります。
特に、これからホワイトペーパーを活用し始めるフェーズでは、完璧なものを作るよりも、「まず作って、市場の反応を見る」ことが何よりも重要です。
どのテーマが顧客に響くのか、どのような情報が求められているのか、今後のマーケティング活動を判断する上で貴重なデータを効率的に得る優先度の方が高い。
すでにホワイトペーパーの活用経験が豊富で、現時点でも商談・受注が十分あればいいのですが、そうではない場合はやはり、施策の成果を判断するためのデータ量が必要となるため、作ることに時間をかけるよりも、パッと始めてノウハウ・経験・データの蓄積から進めるのがお勧めです。
製造業のホワイトペーパー作成のコツ
実際にホワイトペーパーを作成するためのステップを、製造業の業務に例えながら解説していきます。
1. 設計図を描く:誰の何の課題を解決するのかを徹底的に考える
2. 部品を揃える:2種類のホワイトペーパーを使い分ける
3. 見やすく加工する:グラフや図解で見える化する
4. 人間の声を入れる
コツとは言いつつも、基本を元にしていますので、資料作成の経験が多い場合は、すんなりと理解頂けるかもしれません。
もちろん、資料作成の経験が少なくてもわかるようまとめているのでご安心ください。
1. 設計図を描く:誰の何の課題を解決するのかを徹底的に考える
製品を作る前には必ず、設計図を描きますよね。
それはホワイトペーパーも同じで、まずは誰に・何を・どう伝えるか「設計図」をしっかり描き、社内で共有しましょう。
これらの要素は基本的なことだとよく言われるのですが、ホワイトペーパー作りに慣れていない方の多くは、誰に・何を・どう伝えるかより、自社や自分が何を伝えたいのかに偏りやすくなる。
これがホワイトペーパー作成の失敗原因にもなっているため、本当に重要な項目です。
項目 | 説明 |
---|---|
誰に?(ターゲット) | 誰がホワイトペーパーを読むのか。購買担当者か、技術者か、それとも経営者か。ターゲットの職種や役割によって、求める情報は大きく異なります。 |
何の課題を? | 顧客が本当に困っていることは何でしょうか。「コスト削減」「品質向上」「納期短縮」など、具体的な課題を一つに絞り込みましょう。 |
どうやって? | その課題を、あなたの会社のどの技術や製品で解決できるのかを明確にします。 |
この「設計図」をしっかり描くことで、内容のブレを防ぎ、見込み顧客が理解しやすく自分事になるホワイトペーパーが作れます。
「誰に」の部分ですが、相手は同種の専門家であるため、この意識が抜けていると魅力的なホワイトペーパーが作れなくなるので注意が必要です。
2. 部品を揃える:王道2種類のホワイトペーパーを使い分ける
顧客のニーズには、今すぐ解決したい顕在ニーズと、将来に備える潜在ニーズの2種類があります。
自社の状況に合わせて、下記のどちらを優先するか決めると進めやすくなります。
- 技術系ホワイトペーパー(顕在ニーズ向け)
- ノウハウ系ホワイトペーパー(潜在ニーズ向け)
しかし、多くの製造業では、まず見込み顧客から求められている、技術系ホワイトペーパーを作るのが効果的です。
BtoBマーケティングの基本も、やはり見込みが高いところから攻めていくことなので、技術系はお勧め。
技術系ホワイトペーパー(顕在ニーズ向け)
項目 | 説明 |
---|---|
目的 | 今すぐの問い合わせや商談につなげたい |
内容 | 製品の技術的な詳細・具体的なデータ・導入事例など |
理由 | 「特定の部品を安く手に入れたい」「特定の加工技術を持つ会社を探している」など明確な課題を持つ顧客は、具体的な情報だけを求めているからです。 |
お客様はすでに「〇〇で△△したい」と、ある程度、解決したいことが固まっている状態であるため、そのニーズへ適合できれば、商談にも進めやすくなります。
ただし、ニーズが固定化されている関係で、他の提案をしても受け入れてもらえない可能性もあるため、商談になったとしても、追加提案などはしづらい状況もあります。
ノウハウ系ホワイトペーパー(潜在ニーズ向け)
項目 | 説明 |
---|---|
目的 | 将来の顧客候補と信頼関係を築きたい |
内容 | 業界のトレンド・課題の解説・技術導入のメリットやデメリット |
理由 | 今は明確な課題がなくても、将来に備えて情報を集めている顧客に、「この会社は頼りになりそうだ」と印象づけることができるからです。/td> |
潜在的に「これが解決できればいいのに」と感じている状態であるため、その潜在的なニーズを言語化できないと、お客様はホワイトペーパーを見てくれません。
しかし、前提の知識が少なかったり、課題の初期段階から接触できれば、自社の信頼性を高めて技術力も理解してもらいやすくなるため、商談へ移行した場合は、追加提案もしやすくなります。
3. 見やすく加工する:グラフや図解で見える化する
製造業のホワイトペーパーは、数字やデータ、複雑な技術情報が多くなりがちです。
これを文章だけで説明すると作り手は難しく、読者も難解で疲れてしまい、せっかくの魅力的な内容も伝わりません。
いくら相手が製造業のプロフェッショナル(見込み顧客のこと)であっても、分かりやすさが乏しければ理解するのは難しい。
そのため、情報を見やすく加工することが、製造業の作るホワイトペーパーでは求められます。
項目 | 説明 |
---|---|
グラフ | コスト削減率や不良率の改善データなど変化や比較を視覚的に表現する |
図解 | 複雑な製造プロセスや製品の仕組みをシンプルに見せる |
表 | 複数の製品スペックや材料の特性を比較しやすく整理する |
たとえばIR資料(投資家向け資料)が、複雑な財務情報をグラフや表でわかりやすく見せるのと同じで、あなたのホワイトペーパーも、数字の羅列ではなく、「一目でわかる」ことを目指してみましょう。
コツとしてはいくつかあり、
・注目数字のみを大きくする
・なるべくグラフや表内の要素は減らす(線など)
・1スライドに詰め込み過ぎない
・イラストやアイコンなどで情報を補完する
・図解内の図形や要素のテイストは同じにする
など
見せ方の工夫は色々あるので、見やすく加工することを意識できると、結果として見栄えもよくなります。
4. 人間の声を入れる
製造業のプロフェッショナル向けに作るホワイトペーパーには、技術やデータなど、難しく感じる情報が、どうしても多くなります。
情報としては正しいですが、それらだけでは見込み顧客の心は動きません。
特に検討期間が長く、1商談がとても重い製造業にとっては、製品の性能だけでなく、「この会社となら安心して取引できる」と感じてもらえる、信頼関係を構築できるかがとても重要です。
そのため、情報をただ提供するのではなく、心の通った雰囲気、またはメッセージ性を強くするために、ホワイトペーパーへ盛り込んでおきたい人間味があります。
項目 | 説明 |
---|---|
社長メッセージ | 技術に対する想いやお客様との関係性を大切にする理念を語る |
技術者の声 | 開発の苦労話やこだわりを語る |
お客様の声 | 導入後の具体的なメリットや、担当者への評価を載せる |
このような人間味を加えることで、ホワイトペーパーは単なる資料から「生きた情報」へと変わり、競合との差別化も図れます。
まとめ
製造業におけるホワイトペーパー作成のコツは、特別な魔法ではなく、作成側が顧客視点となることに尽きます。
まずは「誰の、何の課題を解決する」のか「設計図」をしっかり描き、次に「技術系」と「ノウハウ系」のホワイトペーパーを使い分け、専門的な情報を「見やすく加工」し、最後に「人の声」を加えることで、信頼性を高める。
これらのステップを踏むことで、あなたの会社は単なる部品供給者ではなく、「課題解決の頼れるパートナー」として、多くの見込み顧客にアピールする強力なマーケティングツールを手に入れることができます。