いつも見て頂きありがとうございます!「エンプレス」の編集部:sugiyamaです。採用がうまくいっていない時は、採用ブランドを明確にして差別化を図っていきましょう。
採用ブランディングとは
採用ブランディングとは、企業の魅力や強みを、社内外へ明確に伝え続け、優秀な人材の引き込む力を強めること。
何か公式な定義があったり決まりごとがあるわけではないので、採用ブランディングの考え方は企業・個人ごとでも変わるのですが、共通するのは人材に対するアプローチの強化。
ブランド×人材×継続がカギになります。
採用ブランディングの全体像
採用ブランディングは応募や入社を増やすアウターブランディング(社外向け)と、入社後の定着や安定した活躍を促せる土壌作りのインナーブランディング(社内向け)、この両方を実行する必要があります。
2つのブランディング活動を通じて、組織力が高まり業績も伸びていく。
アウターブランディング | 市場内の差別化、認知度向上、魅力の発信、応募数UPなど |
---|---|
インナーブランディング | 採用プロセス、人事評価制度、社内文化、現場の協力など |
企業の外も内もブランディングの対象とすることで、初めて採用ブランディングとして成り立つため、どちらか片一方ではなく両方対応していきます。
たとえば「採用サイトをリニューアルした」は、アウターブランディングの一部分でしかなく、目の前の課題を単発で解決しただけ。
気を付けないと手段ばかりに目がいくため、じっくりと時間をかけて長期的な目線で進めていきましょう。
採用ブランド”力”の違いは何を引き起こすのか
採用におけるブランド”力”の違いは、何を引き起こすのか。
採用ブランドが強いと、
- 求めている求職者(新卒・中途)と接触する機会が増える
- 応募が増える
- 採用通知後の入社が増える
ことあるごとに競合(他業種も含む)と比較されても、選ばれる確率が高くなります。
採用ブランドが弱いとその逆で、選ばれる確率が低くなる。(そもそも接点が持てない)
人が減りどこも人手不足の中、売り手市場が加速しているため、採用に力を入れている企業へどんどん優秀な求めていた人材が流れてしまう。
大企業・中小企業・スタートアップなど企業ステージや規模関係なく、人材の確保はどこも難しので、採用ブランディングが必須事項になっています。
採用ブランディングの重要性
採用ブランディングの重要度が高いのは、実施することで人材に関わる多くの課題解決に繋がるからです。
課題:認知度が低い…
解決:求職者と接触機会が増える
課題:応募が少ない…
解決:エントリーが増える
課題:入社が増えない…
解決:オファー後は入社確率が高くなる
課題:定着せず辞めてしまう…
解決:継続的に勤務してくれる
課題:活躍してもらえない…
解決:社内のエースや活躍人材へ成長し業績を高めてくれる
これらの好影響は、採用ブランディングによる恩恵が大きいと言えます。
応募から活躍するまでの流れ
企業を知る
↓
ブランドを理解した上での応募なのでマッチング度が高まる
↓
入社後の不一致が起きない
↓
成果が出せる環境があるため成果が出しやすくなる
↓
楽しくて退職も考えない
↓
組織力強化に繋がり好影響が続く
人材問題の解決にヒットするため、採用ブランディングは人材確保にうまくいっていない全ての企業で必要です。
採用ブランディングの進め方
採用ブランディングを行うには、きちんとブランド要素を抽出して言語化・可視化していく流れがカギとなるため、必要工程の抜け漏れがないように進めていかなければいけません。
必要な工程を解説していきます。
流れ | 工程 | 期間目安 |
---|---|---|
STEP1 | 現状分析 | 2週間~1か月 |
STEP2 | 調査分析 | 2週間から1ヶ月 |
STEP3 | 採用ブランドのビジョンとミッションを設定 | 2週間から1ヶ月 |
STEP4 | ターゲット候補のペルソナ作成 | 1~2週間 |
STEP5 | 競合分析と差別化ポイントの明確化 | 2週間から1ヶ月 |
STEP6 | 採用戦略(コンセプト)の策定 | 1~2カ月 |
STEP7 | 採用ツール・コンテンツの作成 | 2~3ヵ月 |
STEP8 | 採用ブランドを社内外へ展開 | 1~3カ月 |
STEP9 | 効果測定とフィードバック | 2週間から1ヶ月 |
STEP10 | 改善 | 継続的 |
STEP1:現状分析
工程 | 現状分析 |
---|---|
期間 | 2週間~1か月(目安) |
実行者 | 自社 |
現状分析では、自社の人材に関わる状況・情報を全て洗い出します。※ このタイミングで採用ブランディングの支援パートナーに参画してもらえているなら一緒に進めていき、そうでないなら自社のみで対応。
ブランディングのコンサルティングを受ける場合は、業者選定・見積もりするためにも、現状分析した情報が重要になります。
- コーポレートブランド(ミッション・ビジョン・バリューなどの体現度など)
- 会社や事業の課題
- 求めている人材定義
- 人材が必要な部署
- 求職者と接点を持てている媒体
- 採用関連のツール(webサイト、パンフレット、動画など)
- 応募、採用、退職
- 人事制度や社内文化
他にも人材が関係する情報を、社内からかき集めておく。
現状が分かっていない状態では、自分たちの現在地が分からず、どこからどのように目標へ向かって動けばいいか分からないため、現状分析がとても大事です。
事業課題の洗い出しが重要
採用が必要な理由の多くは、事業成長のための人材追加にあります。
たとえば、営業力が足りなければ営業マンを、クリエイティブが弱いのであれば制作者を、社外へのアピールが不足しているなら広報を。
つまり、現在発生している具体的な課題解決のために採用が行われるため、人を追加する手段にばかり目を向けていると、結果として必要な人材が集まらず獲得もできません。
事業の状態が分かれば、本当に必要なスキル・経験・人物像が明らかになり、採用ターゲットが正確になることで、費用対効果が高くなり、採用が事業成長へ密接に繋がっていきます。
根本の課題から必要な人材が定義できれば、採用ブランディングの解像度も高まるため、入ってほしい人材獲得が進んでいきます。
STEP2:調査分析
工程 | 調査分析 |
---|---|
期間 | 2週間~1か月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
調査分析では、自社から競合まで、範囲を広げて調査を行い、採用ブランディングに必要な情報を抽出していきます。
具体的には、下記のような対象へ、インタビューやアンケートを実施。
社内
・新卒入社者
・中途入社者
・退職者
・経営層(社長など)
・現場メンバー
…etc
社外
・ターゲット人材(応募前の求職者など)
・競合の人材定義
・自社の取引先
…etc
求める人材を定義するためには、社内であればエースとして活躍している方や、社外なら応募が見込める求職者へ、インタビュー・アンケートなどを通じて情報を収集していく。
退職者にも改めて接触機会をもらい、入社前後で変化した印象なども引き出していきます。
これにより、自社の強みや他社との差別化ポイントを明確にし、採用ブランディングを進める上で大事な情報が集まっていく。
特に、普段は表にでない情報が採用ブランディングのカギとなることも多いため、徹底的に情報を収集していきましょう。
STEP3:採用ブランドのビジョンとミッションを設定
工程 | 採用ブランドのビジョンとミッションを設定 |
---|---|
期間 | 2週間から1ヶ月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
採用ブランドのビジョン・ミッション設定は、打ち出し方のカギとなる情報を作る工程です。
そもそもコーポレートブランドが存在している状態ですが、これは会社全体を表すブランドであり、そのまま活用しても求職者に対しては届きません。
そのため、社内外の人材向けに採用ブランドを用意することで、企業文化や環境など、会社で働くことへの魅力を伝えきることができます。
コーポレートブランドと別に採用ブランドを用意しますが、まったく別ものではなく、コーポレートブランドを中核に置きながら、採用へカスタマイズしていくイメージ。
採用専用にミッション・ビジョンを用意すると、求職者は企業が目指す方向を理解し共感が促され、自分がどのような役割を果たせばいいのか具体的に理解できるようになります。
採用活動に必要なクリエイティブを用意する時も、採用ブランドを基に作るため、採用ブランディングにおいては重要な工程です。
STEP1とSTEP2で集めた情報を基に採用ブランドを作るため、手順を間違えないようにしましょう。
STEP4:ターゲット候補のペルソナ作成
工程 | ターゲット候補のペルソナ作成 |
---|---|
期間 | 1~2週間(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
採用したい人材や大切にしたい人材を定義し、候補となる対象者の具体化をしていきます。
具体化する内容としては、
- デモグラフィック(年齢、性別、学歴、職歴、職業、所在地など)
- サイコグラフィック(価値観、関心、ライフスタイル、心理的側面など)
- キャリア志向(キャリア、仕事に求めるもの、転職理由など)
- 行動パターン(転職活動のプロセス、自宅での過ごし方など)
- スキルや経験(専門知識、スキルなど)
- 社内からの求める人物像(優秀なスタッフの特徴など)
- 退職した人物からのフィードバック
- 競合人材(競合の求職者ペルソナなど)
これらの情報を基に、理想を反映した架空の人物(ペルソナ)を複数用意。
実際に存在する人物でもいいですが、理想を入れ込ることで、ペルソナの解像度が高まっていきます。
共通した人物像を用意しておくことで判断基準が明確になり、同じ意識・目線・感覚で採用に関わる社内メンバーが活動できるため、コミュニケーションロスも防げます。
STEP5:競合分析と差別化ポイントの明確化
工程 | 競合分析と差別化ポイントの明確化 |
---|---|
期間 | 2週間から1ヶ月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
自社の採用ブランドを言語化させたら、戦略策定に必要な競合との差別化ポイントを明確にしていきます。
仮に、どれだけ良い採用ブランドを作れたとしても、競合と似たような打ち出し方になってしまえば、効果が半減する可能性も。
求職者も応募先を比較した時に、同じようなことがズラズラならんでいれば、惹かれる情報もなくエントリーまで進んでくれない。
採用ブランディングの過程で、競合との違いを明確にすることは、成功確率を高めることに繋がるため、違い作りを徹底的に行っておきましょう。
STEP6:採用戦略(コンセプト)の策定
工程 | 採用戦略(コンセプト)の策定 |
---|---|
期間 | 1~2カ月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
採用ブランディングにおいて戦略作りは、採用活動の方向性や具体的な手法を明確にし、求めた人材確保・定着を実現させる重要な工程です。
戦略のために採用人数・期間・スキルセットなど具体的な数値化を行い計画していく。
事前にターゲット(ペルソナ)を定めているため、そこに対して適切な接点やメッセージの伝え方などアプローチを考えていきます。
いつ・誰に・何を・どこで・どうやって・伝えるか、求職者の行動プロセスに沿って考えると分かりやすくなります。
行動プロセスを可視化するために、カスタマージャーニーマップと呼ばれる、行動・心理などを一連の行動で追っていくフレームワークが効果的。
この戦略によって、結果が大きく変わってくるため、焦らずじっくりと時間をかけて作っていきましょう。
その他大事なこと
戦略策定の時に、既存の採用プロセスの見直しは必須事項です。
求職者の体験から設計し直すことでストレスが減り、応募・面談・採用までのリードタイムも早くなる。
その他、入社後の不安や満足度維持のために、オンボーディングツアーや、既存スタッフと打ち解けられるイベントを開催するなどして、心の距離も縮める施策を入れていきましょう。
新卒や若い世代と中途・キャリア志向など、ターゲットの属性によっても、接点が持てる機会は変わってくるため、戦略策定には時間がかかります。
STEP7:採用ツール・コンテンツの作成
工程 | 採用ツール・コンテンツの作成 |
---|---|
期間 | 2~3ヵ月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
戦略が定まったら、採用ブランドを社内外へ向けて理解を広めるためのツール開発やコンテンツを作成していきます。
具体的には、以下の項目が必要です。
採用ブランド
・採用メッセージ(キャッチコピーなど)
採用ツール
・採用サイト
・動画(セミナー用、インタラクティブ動画なども含む)
・資料(会社説明、事業説明、採用ピッチ、セミナー用など)
・紙媒体(パンフレット、リーフレットなど)
・展示会(ノベルティなど)
採用コンテンツ
・SNS用投稿文章
・ブログ用投稿文章
・インタビュー(単独、グループ、対談など)
・イベント告知用記事
これらのツールやコンテンツは、採用ブランドの発信を強化して、求職者と企業を引き合わせられ、採用ブランドを「言語」「デザイン」の両方で見せられるため、具体的なイメージとして記憶に残り、求職者の行動が促せます。
STEP8:採用ブランドを社内外へ展開
工程 | 採用ブランドを社内外へ展開 |
---|---|
期間 | 1~3カ月(目安) |
実行者 | 自社 |
戦略に基づいて、採用ブランドを社内(自社)・社外(求職者)へ向けて発信していきます。
ポイントは、ターゲットと出会えるポイントごとに、必要な採用ブランドを仕込むこと。
SNSで情報収集している方には、TikTok・Instagram・X(旧Twitter)などのソーシャルメディアへ。
より具体的に転職先候補を探している方には、公式サイトでブログ等を通じてブランドを認知させる。
広告を使った広め方もあるので、目標達成へ向けて色々と動かしていきます。
STEP9:効果測定とフィードバック
工程 | 効果測定とフィードバック |
---|---|
期間 | 2週間から1ヶ月(目安) |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
採用ブランディングを進めたからと言って、すぐに成果が表れるわけではないため、日々の成果をウォッチしながら効果測定と、その都度プロジェクトメンバー内でフィードバックを行っていきます。
支援パートナーに参画してもらえた場合は、状況を俯瞰して捉えられるようにレポーティングしてもらえたりもします。
STEP10:改善
工程 | 改善 |
---|---|
期間 | 継続的 |
実行者 | 自社 + 支援パートナー(依頼していた場合) |
効果測定とフィードバックを踏まえて改善策を考え、細かく修正していきます。
採用ブランディングは1度行えば終わりではなく、継続的に取り組むものなので終わりがないため、ブランディング活動は長期戦だと認識しておきましょう。
採用ブランディングの注意点
採用ブランディングの効果は大きいですが、必ずしもメリットばかりではありません。
失敗やトラブルもあるため、注意点を確認しておきましょう。
注意① 必ず成功するわけではない
採用ブランディングを進めても、成果が保証されているわけではありません。これは支援パートナーに入ってもらったとしても同じことで、採用ブランドが正しく具体化できていなかったり、本来必要なターゲット求職者へ訴求できなかったり、失敗の芽はいつ生まれてもおかしくない状態。だからこそ、慎重に進める必要があります。
注意② 初期投資にお金と時間がかかる
短期的な成果ではなく、長期的に取り組むことで採用ブランディングの成果が見えてきます。そのため、初期投資(お金・時間)がかかり、成果が見えてこないと「失敗」だと思ってしまいやすくもなる。長期戦であるため、じっくりと取り組んでいきましょう。
注意③ 時代により採用ブランドが効かなくなる
今回採用ブランドを定めても、時代が変わったり、自社の状況が変われば、作成した採用ブランドが合わない状況も出てきます。常に成果を確かめながら、状況に合わせてこまめに調整していきましょう。
採用ブランディングを成功させるポイント
採用ブランディングが初めてであれば、難易度はとても高いと思います。
支援パートナーに参画してもらったり、十分なブランディング知識を得たうえで進めればいいですが、それだけでは成功できない場合も。
他にも成功させるポイントがいくつかあるため、事前に確認しておきましょう。
現場を巻き込むこと
採用ブランディングの主要なプロジェクトメンバーは、人材に関わる経営層・人事・広報・経営企画が多いと思います。しかし、ブランディング活動を行うのは、プロジェクトメンバーだけではなく、人材と関わっている現場の方々も同じこと。現場の協力がなければ達成できない取り組みでもあるので、自社でブランディングの必要性を事前に説明したり、現場を巻き込んで社内全体で取り組む意識を持っておきましょう。
短期的な成果は求めないこと
採用ブランディングは、社内に大きく影響もあるため、それだけのことを実行したのであれば当然成果は早く求めたくなると思います。しかし、今日実行して明日には成果が出るような単純なものではなく、徐々に採用ブランドを浸透させて理解を促すには、それなりの時間がかかってきます。短期的な成果は求めず、長期で取り組んでいきましょう。