いつも見て頂きありがとうございます!「エンプレス」の編集部:sugiyamaです。提案書の基本さえ知っていれば、今まで書き方・作り方に感じていた不安が、和らぐかなと思っています。
まず安心して頂きたいのが、提案書を作るために、長時間学ばないといけない、実践を積み重ねないといけない、そんなことはありません。
すごいテクニックもいらない、デザイナーやライターなど専門スキルが無くても大丈夫。
提案書は営業+提案の意識が強いけど、本当はお客様と意識・目的のすり合わせを行うコミュニケーションの一つでしかない。
思考を変えればアウトプットとなる提案書(企画書)の姿は大きく変わるため、伝わる資料作りの基本を見てみましょう。
こんな方にオススメ!
・苦手な資料作りを得意にしたい
・提案書作りですぐ実践できる知識がほしい
・どんなシーンでも活用できる資料作成のコツが知りたい
提案書とは?
提案書とは、あなたが思う考えや道筋を、文章・画像などを用いて見える化して、相手に伝える資料のこと。
営業のためのプレゼンや、社内で新規事業・プロジェクトを進める時などに、よく作られています。
しかしながら、資料作りを一から先輩・上司に教えてもらう機会は少なく、多くの方がインターネットで調べたり、周りの人の資料を見て学びながら、独学で進めていくのが多いかなと感じています。
そのためか、提案書作りに不安を感じたり、基本がそもそも分かっていないため、作るたびに成果が出せず、営業であれば失注続き、なんてこともある。
このページでは、提案書の基本からどんなシーンでも臨機応変に使える柔軟性のある知識が身に付き、さまざまな提案で活用できます。
提案書と企画書の違い
提案書と企画書、どちらも同じ意味で使っている方も多いですが、同じ資料ではあるものの違いがあります。
提案書:抽象的
企画書:具体的
簡単に分けるとこのような形ですが、「提案」と「企画」の言葉の意味がそもそも違うので、それらの定義でまとめられた情報も同じではありません。
提案では思考や意見など、まだ具体的には言えないけど、案として出された情報なのに対して、企画は設計・計画など進む道がある程度定まっている状態を指します。
そのため営業でたとえれば、
受注前:提案書(プロジェクトに対して最大限のパフォーマンスを発揮できる案を出す)
受注後:企画書(実際にプロジェクトを進める上での計画書)
使い方の違いを覚えておくだけでも、誰かに聞かれた時スッと回答できます。
提案書で失敗する原因とは?
あなた側 「これで大丈夫か不安だな…」
お客様側 「なんだかしっくりこない…」
提案書を作った側もそうですが、実際にその提案書を見せられている側の方も同じく、なんだかなぁと納得できず、不完全燃焼なモヤモヤ抱えることって、多くありませんでしたか?
提案書と呼んでいる資料ですが、名前のまま認識していると、間違った提案書を作っている場合があります。
提案書に含まれる意味や感情
・営業したい
・受注したい
・契約したい
・自分の思った通りに事を運びたい
提案なので、自分たちができることをメインに盛り込もうとしますが、実はここがズレた思考の原因にも。
もう少し簡単に言えば、自分の気持ちだけが先走ってしまい、相手の気持ちを置き去りにしている状況。
提案側の目的 :契約したい
受ける側の目的:課題解決したい
そもそもの目的が重なっていないと、一方的なコミュニケーションにしかなりません。
提案書は単なる情報がまとめられた資料などではなく、提案側と受ける側が意識や目的のすり合わせを行いながら、一緒に未来を創っていくためのコミュニケーション材料。
しっくりこない提案書の原因
もう少し、しっくりこない提案書の原因を深堀してみます。
① 翻訳されていない
② 自分都合の内容になっている
③ 将来をイメージできない
④ 誰が見るのか理解できていない
⑤ 手段が目的化している
これらが何を示しているかと言えば、読み手が自分事として受け止められない情報が多いからこそ、他人事になってしっくりこないのかと思います。
① 翻訳されていない
資料作成における「翻訳」とは、資料の読み手が分かる言葉に直されていないことを指します。
翻訳例
× 今日はMTGを行います。
〇 今日は会議を行います。
IT業界ではよく使われるMTG(meeting:ミーティング)ですが、もしこの単語を使ったことがない、または知らない方に対してMTGと表現したら「?」しか出ません。
たとえばあなたが、英語ができないのに英語の映画を見た、中国語が分からないのに中国語の映画を見た、しかも字幕なし。
意味が分からず、たとえ面白かったとしても内容が理解できないため、物語は先に進むのに言葉が理解できないので雰囲気だけを楽しむ。
理解できない情報を延々と見せられ他人事となって、心にも何も残りません。
② 自分都合の内容になっている
提案側は「ぜったい契約したい!」「今月も達成したい!」と意気込んで提案をしますが、その気持ちによって本当にお客様が求めていることを見ず、自分たちの目的ばかりを優先した提案書になることも。
たとえば提案を受ける側は予算が無い中で、どんな解決方法があるのか知りたいのに、提案側は単価を高くしたいと思って企画モリモリの予算莫大な提案をしたら、求めている提案とは異なり見向きもしなくなります。
極端な例ですが、自分都合の提案になればなるほど、お客様には避けられてしまう。
③ 将来をイメージできない
提案が過去・現在で止まっているのか、または未来に繋がっているのか、お客様は敏感に感じ取っています。
例
× 売り上げが2倍になります。
〇 売上2倍達成を目指すことで利益体質の仕組みが作れます。
単なる売上・利益の追求だけにとどまるのか、それを継続できる環境やノウハウとして残る体験になるのか。
ちょっと伝え方が違うだけで、将来的なワクワクがまったく変わってきます。
④ 誰が見るのか理解できていない
見た目はもちろん大事ですが、見た目が良いから「あなたの提案に決めました!」と言われる機会はほぼなくて、見た目で選ばれるのはデザイン提案くらいなものです。
むしろ、結果的に導入/購入を決めるのは、社内の意思決定者または決裁者になるため、その方々向けに資料が作られていないと、結果が出にくい。
誰を見て提案書を作るか
・現場担当者
・キーマン(意思決定者・決裁者)
特に意識したいのが意思決定者・決裁者。
提案書を「渡す・見てもらう」前の両社の関係性や、提案後のフォローも重要ポイントですが、見る人によって欲しい情報が違うことも理解する必要があります。
現場 :進め方・機能・サポートなど
キーマン :費用対効果・利益など
場合によっては、現場担当者さんとキーマンへ、別々に提案書を用意した方がいい場合もあります。
⑤ 手段が目的化している
提案書が用意される理由は、情報を可視化して、相手に伝え「伝わる」こと。
しかし、デザイナーではない、クリエイターでもない、そんな方だとしてもPowerPointやGoogleスライドを使えば、見た目が簡単に整えられた資料が作れます。
他にも資料内容をしっかりストーリー化させて、誰に何を伝えたいのかハッキリ分かってない状態だと、何だか消えない不安に付きまとわれ、結果として目の前ですぐ実践できる見た目に意識が集中してしまう。
本来は情報を伝える手段が提案書ですが、だんだんと作ることが目的になっていき、本質を見誤ってしまう。
提案書をきれいに作る意識に捕らわれると、目的が「きれいに作ること」になっていき作り手の目指したいゴールから遠く離れてしまいます。
作り込むほど方向転換できない罠に落ちていきます。
提案書で出来ること
提案書を使うシーンはビジネス上たくさん存在しています。
社内:新規事業、社内改善など
社外:営業提案、サービス提案など
社内・社外関係なく「こうすればもっと良くなるかもしれない」と提案する機会は多いため、提案書が活躍してくれる。
しかし、口頭だけで伝える、文章だけで伝える、これでは聞く側に負担が大きいです。
お互いが幸せな未来に向かって進みたいとは思っているものの、情報理解には時間も意識の集中も必要なので、ストレスがかかってしまう。
情報を絞り込んで整理したり、図解・イラスト・写真なども用いて、より理解が進む状態にする。
そこまでやって初めて、提案内容を受け入れてもらえるので、新しことを一人ではなく、誰かと何かを始めるなら、扱い方を間違わなければ提案書は強い味方になってくれます。
提案書の書き方・作り方
自由に作れるからこそ、ついつい見栄えの良いグラフを多用したり、文字数多め・少なめの資料を作ってしまい、無秩序な提案書になる。
また、誰に何を理解してもらいたい提案書なのか分かっていない状態で作ると、たとえば提案相手以外に資料を見てもらった際、なんだか分からないので「却下」と言われ先に進めない場合もある。
まず基本の流れを覚えつつ、提案書作りに必要なその他の情報も取り込んでおくと、状況が変わっても応用が利くようになります。
提案書の基本
現状分析
提案書を作る時に、まず行わなければいけないのが、相手を知ること。
自分たちのことを「知ってもらいたい」「伝えたい」ばかりを考え、相手のことを何も理解しようとせず作ってしまう、これはよくある失敗パターンです。
提案書を見て頂く方の状況はもちろん、所属会社を取り巻く状況も把握しておけるといいかもしれません。
提案相手の状況
∟困っていることは?
∟誰が困っているのか?
∟困っていることの影響範囲は?
∟改善できたらどうなるのか?
∟決裁権は誰が持っているのか?
∟関連人員・部署は?
…etc
所属企業の状況
∟ビジョン
∟ビジネスモデル
∟売上・利益など
∟市場
∟競合
…etc
直接提案書を説明する相手はもちろん、その方の周りの状況も知っておければ、提案の幅も広がります。
たとえば提案書を見てくれる方が、社内稟議を通すのに苦戦していることを知っていれば、意思決定者が求める情報を多めに含めたりできる。
自分を知ってもらいたい気持ちを抑え、まずは相手を知ることが、提案書作りの始まりだと思っています。
情報収集
提案書を見てくれる方が「誰」なのか、具体的にイメージが出来上がってくると、必要な情報もおのずと分かってきます。
まずはあなた自身、または自社が持っている必要な情報をかき集めながら、足りない情報は外から持ってくる。(インターネットや書籍など)
ここで知っておきたいのが、提案書作りは最初から情報が少ない状態で作り出すのか、または必要な情報の中から絞り込むのでは、後者の方が楽なこと。
後から追加する場合、改めて探し出す時間も必要ですし、入れ込もうとすると最初に考えていた提案ストーリーが途中で崩れてしまって、やり直しになります。
提案書作りでもっとも時短となるのは、途中途中止まることなく、一気に作り出して仕上げまでする進め方です。
情報が足りないほど、さらに時間がかかってくるため、作り出す前の情報収集は甘く見てはいけません。
情報整理
情報を集め終わったら、そのままでは扱えないので、情報をグループ化したり、整理整頓して扱いやすい状態へ変えていきます。
たとえば提案書を見る側としては、資料をじっくり一語一句見たいと思っているのではなく、提案内容の中に自分が困っている状況(課題のこと)を、解決するヒントはあるのか?感じている不の解消へ意識が向けられている。
もしそのような状態で、不要な情報がたくさん入っていれば、せっかく提案書へ意識が向けられていたのに、関連情報が見当たらないので「これは求めている提案・情報ではないない」と感じて、すぐに興味を失ってしまう可能性も。
提案書の内容を考える:求められている情報を見極める
提案書へ書き出す :情報が見やすいよう整える
同じように見えますが、実際は全然違います。
見た目を整える前に、必要な情報のみを用意することは、提案書作りでとても大事な工程です。
スライド構成(ストーリー作り)
「誰」に「何」を伝えればいいのか分かってきたら、集めた情報をもとに提案書のスライド構成(ストーリー)を考えていきます。
スライドは何枚くらいがいいのか?きっとこの疑問もあると思いますが、以前調査した結果から言えば11~20枚ほどで抑えるのがいいと思います。たとえば1枚の代わり映えしないスライドが表示された状態でずっと説明されても、聞く方は飽きてしまいます。また、ノウハウなど情報量がものを言う場合は、100枚以上になったりしますが、提案書を使うシーンを考えてみれば、時間もあまりないのと、その他質疑応答などの時間も必要なので、30分ほどで説明できるスライド枚数が望ましいと言えます。
よく使われるスライド構成としては、下記のような内容があります。
出典:プロダクト・サービス資料構成の最適解とは?公開前のチェック項目付き | |
---|---|
テーマ | 詳細 |
表紙 | 提案書の顔となる最初のスライド |
特徴 | 提案内容の詳細・提案背景など |
料金 | 価格・費用対効果・シミュレーションなど |
概要 | ~とは・目的・全体像など |
CTA | 問い合わせ先・電話番号など |
流れ | スケジュール・ |
課題 | 困っていること・問題・トラブル・お客様が意識していることなど |
事例 | お客様事例・失敗例・定量/定性データ・根拠など |
紹介 | 作成者紹介・会社紹介など |
この他にも色々あるのですが、一定の流れはあるものの、提案相手によって細かい部分は加えたり減らしたりと、調整いただくのがお勧めです。
提案書は、BtoC(企業対個人)ではなく、BtoB(企業対企業)の社内稟議や意思決定者に対して感情・行動を促進させるため使われる機会が多いため、社内事情でコストに対する費用対効果・根拠を感じるストーリーが求められています。
基本的なストーリー
お客様がすぐ回答できる自分たちの問題・課題、実は表面上のもので、深堀していくと本当の原因が掘り出される場合もあります。
しかし、それを行うには現状分析・情報収集/整理の事前準備が必要なので、提案書として書き出す前に、きちんと事前準備を整えておく必要がある。
問題・課題を解決したいからこそ、提案書を見てくれる相手は時間をとってくれているため、提案後のゴールとしては下記になります。
- 自分たちの問題/課題が明確になること
- 問題/課題を作り出している原因に気づくこと
- 原因を解決する方法が分かること
そうなると必然的に、下記のような流れが求められる。
現状分析 → 要因・原因 → 施策(解決策) → 予測(得られる結果)
提案書や資料作りで誰もが悩みやすい見た目はいわば、上記の流れを相手に「伝わる」形にするための手段の一つでしかないことが分かります。
状況によっては、他スライドは不要で、上記の基本構成のみで提案が刺さる場合もある。
基本は、今(または過去)を把握し、根本的な原因を特定し、それを解決すること。
この内容が提案書に入っていればいいのですが、見た目を整えるより、調査・考察に時間がかかるため、最初から書き出すことに意識を向けすぎない方がお勧めです。
翻訳
翻訳とは、提案書を見てくれる方に対して「伝わる」「理解してもらえる」言葉で表現し直すことを指します。
主に文章のことですが、翻訳ポイントは下記の3つ。
- タイトル
- 説明文章
- 情報の図解
なぜ、表現に気を付けるかと言えば、分からない言葉は、分からないままで終わってしまうから。(右からきて左へ受け流す状態)
あなたも学校の授業、または仕事上で分からない言葉を聞いた時、すぐに調べて理解しようとしますか?後回しにして調べる労力をかけてまで時間は使わないことの方が多いかもしれませんね。
提案書の特徴として、何度も繰り返し見てもらえるわけではなく、ぱっと見の1度だけ、こんなことが多いです。
一度見たときに「伝わらない」「理解できない」資料になっていたら、そもそも提案書のことも印象が薄く覚えてもらえない、結果として提案書を作った意味もなくなってしまう。(かなり悪い状況)
翻訳によって、提案書を見てくれる方へ、徹底的な理解サポートを行うことによって、伝わる提案書に初めてなれる。
自分の言葉で考えるのではなく、読み手の日常や当たり前から想像して言葉・表現を選ぶのが、提案書の正しいと思える作り方です。
タイトル
タイトルは、主に表紙へ組み込まれるキャッチコピーや、各スライドの見出しのこと。
- 長々と書かない
- 端的に分かる表現へ
各スライドの見出しでは、スライドテーマを示す表現にすると、分かりやすくなる。
見出しの例:ご利用の流れが分かるスライド
× 使い方は簡単3ステップで始められます
〇 ご利用の流れ
見出しに特徴そのままを書いてしまうと、説明文章として出したい内容と一緒になったりもするので、端的に表現するのがお勧めです。
説明文章
提案書の役9割が文章だと考えると、伝え方に集中する必要がある。
注意したいのが、自分の当たり前を持ち込まないこと。
作り手:作り手の知識から出る当たり前
読み手:読み手の知識から出る当たり前
作り手が普段当たり前に思っているような情報や知識、実は読み手にしたら当たり前ではないことの方が多いです。
これは資料に限った話ではなく、世の中の一般論とされている情報は、そのグループの中だけで思われていることだったりするので、自分の当たり前でそのまま資料へ書き出そうとすると痛い目をみる…。
情報を伝えたい相手の状況にもよりますが、小学校低学年の方でも分かる言葉使いで、誰でも一瞬のうちに理解できる表現が基本。
この重大事項を忘れて作ってしまうと、作り手は満足するけど、読み手が満足せず、結果が出ずに作り損になりかねないので注意しましょう。
情報の図解
まずは言葉だけの説明と、イラスト(具体像)を用いた説明では、どちらのほうが理解が早まるか実験してみましょう。
NG | OK |
---|---|
文章のみ | イメージも見せる |
どちらの方が言葉の意味を、理解しやすいと感じましたか?
あなた含めて多くの方が、言葉だけでなくイラストも加えた説明の方が、瞬間的な理解が早いと感じたはず。
文章のみ
文字を見る
→文字に書かれた言葉の意味を記憶から探す
→記憶の意味から浮かび上がるイメージを引っ張り出す
→対象を理解する
イメージあり
文字を見る
→文字と一緒に記憶の中にあるイメージを一緒に引っ張り出す
→対象を理解する
このように情報を図解(または画像化)すると、脳内で行われるイメージ化の手間を省けるので、理解スピードを高めてくれます。
プレゼン現場を想像してみると、理解が早ければ提案書の内容が説明されても瞬時に意識が追いつき、集中して見聞きできるためプレゼン効果も上がっていく。
情報をイメージ化できると、読み手の理解を促すことに繋がるため、提案書作りがうまい人は図解・イメージ化を駆使しています。
情報の図解・画像化は、読み手の記憶との答え合わせも兼ねている。
デザイン
ここにきてやっとデザインのお話です。
提案書の書き方・作り方において、作り出す前工程が重要であり、見た目のデザインはその前工程で凝縮された情報を、いかにして見やすく・分かりやすいく・理解しやすい形でサポートができるか。
提案書のデザインが良いからと契約を頂ける場合は、デザイン提案の場合のみであり、通常の提案書は書かれた中身が主役。
あくまでも見た目としてのデザインは「情報」という主役の補助でしかないため、見た目のこだわりは捨ててしまった方がお勧めです。(デザインにおける情報設計は別の話)
そうは言っても見た目の不安は消えないので、基本のみを覚えて何が「悪い」のか「良い」のか判断基準を作っていきましょう。
表紙
表紙は提案書で、一番最初に見られるスライドになるため、誰でも気合が入りやすい。
だからといって、見た目ばかりにこだわって余計な時間を使ってしまうと、伝わる中身を作るための時間が無くなってしまいます。
表紙で大事なのは、この先始まる提案内容の、全体像を表す情報が入っていること。
表紙タイトルの例:売上増加を提案するための資料
× 売上UPのご提案
〇 半年で売上2倍を目指すご提案
上記は例ですが、期間と具体的な到達位置が分かると、情報の図解化と一緒でイメージ化が促進されて、理解が早まります。
あいまいな情報だと、情報の具体化が遅れ、それが期待感の減退にもつながってしまう。
シンプルで良いので、見た目ではなく伝え方をデザインしてもらうのがお勧めです。
配色
色を使うだけで、提案書の見栄えは変わってきますが、注意しないと雑な印象になってしまうことも。
たとえば下記例のように多色と、ある一定の割合で統一された色使いにした場合、どちらがきれいだと感じますか?
NG | OK |
---|---|
多色 | 7:2:1でバランス取っている |
色が付くだけで力を発揮しますが、やりすぎると逆効果に。
基本は、色の統一感を全体に作るため、せいぜい3~4色ほどで抑えて、使う割合もバランスを意識します。
他にも注意事項として、色の印象は強いためあなたの会社のブランドカラーが青なのに、たとえば黄色ばかりをメインカラーとして使っていたら、これもブランドに合わないためお勧めできない。
3~4色で抑えながら、ブランドカラーを意識して、提案書を整えていきましょう。
レイアウト
提案書レイアウトの基本は、左から右に文章を読んでもらうZ型(左右のジグザグ)。
文章の読み方は基本Z型なので、むやみに文字を縦型にしたりせず、一般的な作り方をすれば大丈夫です。
しかし、情報によっては分かりやすさを求めて、見せ方の調整が必要な場合もある。
ここで注意したいのが、インターネット上に転がっているさまざまな資料レイアウトのデザインを、自分の資料へそのまま当てはめようとすること。
その意識のままだと、提案書を作ることが目的となり、いい結果がでませんし、情報に対して合うレイアウトにしなければ、余計分かりにくくなってしまう。
いくつか基本のレイアウトだけを覚えて、それを使いまわしでも、全然問題ありません。
むしろあなたなりの提案書の型ができて、作ることへ悩まないようになり、デザインで使っていた無駄な時間も無くなる。
型作りの参考に、使いやすいレイアウト一覧をまとめた下記の記事もお勧めです。
レイアウト参考:【63選】パワポのデザインには型がある!レイアウト全集
フォント
フォント(文字の種類)は、情報の見やすさを支える重要なポイント。
日本語フォントであれば基本が2種類存在しています。
NG | OK |
---|---|
明朝体 | ゴシック体 |
明朝体 :細さを演出して華麗なイメージを持たせられる
ゴシック体:線幅の均一さ太さを活かして力強さを演出できる
明朝体は書籍などでよく見かけるフォントであり、デザインを意識した提案書でも使われる傾向です。(なんて言ったってカッコよく見えるから)
しかし、見やすさを追求して「伝わる」提案書を作るのであれば、ゴシック体がお勧め。
提案書の作り方・書き方のNG行為
提案書を作るために、PowerPoint・Googleスライド・Keynoteなどが使われて、誰もが自由に資料作成をしています。
ツールが優秀すぎて、思ったことは比較的なんでも実現できますが、自由度が高いからこそ、過剰な作りこみをしてしまう場合も。
あくまでも提案書は、作ることが目的ではなく、伝えたい情報を伝わる状態にして、相手の感情を刺激しつつ意思決定を促すため。
やらなくてもいいことは、最初からやらずにいた方がいいので、提案書作りのNG行為をまとめてみました。
「提案」だからと過剰なアイデアは入れない
提案書は企画書とは異なり、明確なプロセスを提示するわけではないため、比較的自由度の高い考えを出すことができます。
しかし、自由とは言ったものの、自社リソース・スキルなどを考えた場合、体制が作れず実現できない場合もある。
背伸びをせず、現実的に対応可能な範囲の提案へ落とし込んでいきましょう。
リスクヘッジしすぎない
最初から「これができます」「あれができます」と何でも書き入れた場合、あとで「できると言ったじゃないか!」と言った言わない問題に発展することも。
だからといって、過剰にトラブル回避しようと制限をかける、そうなると提案内容も一般的、どこかで聞いたような提案内容にしかならない。
嘘は付かず可能な範囲を見極め、相手の心を動かすような内容を模索してみましょう。
見た目から作り始める
提案書の失敗で多いのは、まず見た目から作りだすこと。
現状分析の章で見てもらった通り、提案書を見てくれる相手が分かってない段階から、作り始めても途中で止まってしまいます。
本当にこれでいいのか?まだ情報が足りないのではないか?
誰に何を伝えればいいのか、どう伝えれば伝わるのか理解できていないと、途中途中止まりながら進むため、さらに時間を使ってしまう。
作る前工程の方が、提案書作りでは大切なので、すぐにPowerPoint・Googleスライド・Keynoteを使うのは避けておきましょう。
平均データを安易に使わない
大量のデータがあると、平均値を使った解説をしたい場合もあるのですが、気を付けなければ誤解を生んでしまう場合も。
たとえば上位のデータと下位のデータで、かなり開きがあるのに、平均にならすとその差がなくなってしまい、情報の本当の姿が見せられなくなる。
読み手に正しい情報を伝えるには、平均データが合わないシーンもあることは覚えておきましょう。
オリジナルデザインを追求しない
提案書が作れる各種の資料作成ツールを使っていると、使いやすさから、ちょっとカッコよくしてみようかな・工夫してみようかなと、作ることへ意識が向けられる場合も。
自分なりのオリジナルデザイン作りを頑張ると、提案書を作る目的と離れていく。
読み手側はむしろ、見た目よりも中身の方に興味があるため、そこまでデザインを気にしていません。
デザインを良くしたいのであれば、本当に時間がある時だけにして、普段は見た目より中身の品質をどう高めるか、考えを巡らせましょう。
解釈の幅が広すぎる表現はしない
人間誰しも、その人の人生を歩んでいるため、人生経験の違いから、記憶・知識・持ち合わせた情報なども異なるため、考え方や趣味嗜好も違ってきます。
たとえば、1日10分を読書をした方、365日5時間ずつ読書をした方も、本人にとっては同じ「がんばった」と表現できる。
解釈の幅を広げすぎた表現を使うと、誤読・誤解を生む原因にもなります。
提案書を見てくれる方は一人じゃなく、多くの場合は上司やチームメンバーに共有されて、複数人が閲覧する。
見てくれた仲間内で解釈が異なると、社内稟議や導入/購入の妨げにもなるので、具体的な表現で伝えるのがお勧めです。
具体的な表現例
× 業務が効率化できます。
〇 1人あたり毎月10時間の削減に繋がります。
誰が、何をして、どうなるのか。
時間軸・数値・対象を盛り込むことで、具体的な表現が可能です。
提案書のテンプレート
提案書の基本を見たものの、やっぱり自分で作り出すのはハードルが高い…。
そう思われている場合は、無理して最初から作る必要はなく、誰かが作ったテンプレートを活用頂くのがいいと思っています。
時間がないなら尚更、テンプレートを活用するのがお勧めです。
日経ビジネス オンライン共同企画企画書テンプレート
マイクロソフトが提供してくれている2000種類以上の中から、企画書テンプレートが無料配布されているため、こちらを参考に。
Office.comの議題テンプレート
提案書で使えるぴったりなテンプレートは無いのですが、カテゴリも多く様々な用途で使えそうなテンプレートが揃っています。
KINGSOFTのパワーポイントテンプレート
提案書の型がいくつもあり、誰かのお手本を使った方が進めやすい場合は、KINGSOFTが提供してくれているテンプレートを使ってみましょう。
提案書の参考サイト
提案書の書き方・作り方では、提案相手に対する事前調査や状況把握が大事ですが、そこが慣れていくと見た目を整える時間的余裕も生まれてくると思われます。
そうなった時に、役立つサイトがいくつかあるので、ご参考まで。
資料ダウンロードプラットフォーム『エンプレス』
上場企業・ベンチャー企業・スタートアップなど、さまざまな企業が資料掲載しています。有名企業の資料が無料で見れるため、デザイン参考にもできますし、情報収集にも使えるサイトです。
slideshare(スライドシェア)
資料閲覧サイトとしては、かなり有名。世界中の方々が資料をアップしているため、自分にはなかった視点や、デザインの着想が得られます。
ピンタレスト
発見を促す画像検索ツール。SNSとはちょっと違うのですが、センスの塊のようなハイレベルな資料デザインが探せます。
最後に。
提案書が苦手な方と得意な方は、何が違うんだろう?
そう思ったときに、「良い」「悪い」の判断基準が自分の中であり、自分都合ではなく相手都合で話を組み立てているのかなと感じます。
基本さえ分かっていれば、手直しが少なくなることで時間的なロスも失くせますし、実際提案時に使えば相手の方々のコミュニケーションロス・ミスを防ぐこともできる。
結果として分かりやすく、伝わる提案書が完成するため、このページが数ある中の一つの基本を知るキッカケになれれば嬉しいです。