「エンプレス」の編集部:エンプレス編集部です。経営者またはそれに近しい方が、よく間違ってしまう失敗事例をまとめています。
事業編
経営者としてもっとも意識しているのは、事業の成長=売上ではないでしょうか。
しかし、うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。
それでも経営を続けるには、売上は重要指標であるため、特に気にされていると思いますが、現場からは少し冷ややかな目を向けられている場合も。
無理に大きく戦略を描こうとする
将来的にはこうしたい、5年後・10年後はこうなっていたい。
大きなビジョンをかかげて成長を目指すため、そこへ到達する計画を立てていく。
未来を想像することは楽しく、あれもこれもと要素が加わり、大きく広げすぎてしまう場合も。
自分ができることは部下もできると思っている
自分自身がプレイヤーとして成功を収めてきた方は、できない人の感覚や、できなかったころの感覚を忘れている場合も多い傾向。
そのため、自分ができることは部下もできて当然と考え、できなければ「なぜできないのか」自分基準で考え指導をしてしまう。
一方的な押し付け指導は混乱を生み、できるものもできなくさせている場合もあります。
他社(他者)の成功事例を真似てはやめての繰り返し
経営者として知っておきたい情報の一つとして、他社(他者)の成功事例が挙げられます。
成功する方法を見つけ出すことは簡単ではなく、見つけたくても見つけられない、または試行錯誤のうえで偶然見つかる場合もあり、かなり不確実性の高いもの。
他社が成功しているのであれば、真似ることで成功までの時間を短縮できると考え取り入れてみる。
しかし、他社が成功しているのは、その環境・体制・思考・人材など、さまざまな要因が絡み合った結果、成し得ている成功であるため、自社に合わないケースも多いです。
成功事例を真似ては辞めての繰り返しになっている場合、自社の特性が見えていない場合も。
短期的なメリットばかりを追い求める
すぐにお金になる事業、すぐに売上に繋がる業務など、短期的なメリットを追い求める。
経営するにはお金が必要なので、稼ぎやすいことに意識が向くのは当然のことですが、すぐお金になることは他社も参入しやすかったり、値下げ合戦になったり、ひどく現場にストレスを与える場合もあります。
短期メリットを追い求めた結果、売上は増えるものの、チームが崩壊したり、お客様からクレームが多かったりと、マイナス面も出てきやすい。
大切な人材が離れていくことも多いので、短期的なメリットだけを追い求めるには代償があるかもしれません。
現場で発生している手間をそのまま放置している
- ハンコを押すために出社をする
- 一つ一つ手計算をする
- 書類提出のために各役職者の机を回る
他にも、手間業務がたくさんある場合、時間だけがとられて現場の不満が溜まっている場合も。
たとえばクラウドを活用したツールを一つ導入すれば済むものの、月額費用などをかけたくないために導入しない。
現場の手間をお金に換算すれば、ツール導入費以上かかっている場合もあるのに、現場の手間を放置して解決しないでいると、どんどん人材も離れていきます。
売上に関わる相談以外は後回しにしている
売上は経営の生命線でもあるので、経営者として気になるのは、どうしても売上に関わること。
そのため、売上関係以外の相談はすべて後回しにしたり、返答するのを遅くしたり、現場の業務が止まっている場合もあります。
業務の循環が滞り、結果として売上が減ってしまう悪循環に陥りやすくなっています。
前例がないことは許可しない
重要な判断をする時、前例がないと判断できない、許可できない。
たとえば大きくお金を動かす、または事業の方向性を大きく変更するなど。
しかし、世の中が目まぐるしく変わっている中、前例がなくても判断しないといけないシーンが多く、前例がなければ判断できないと何も進められません。
現場が進めたいと思いアクセルを踏んでいるのに、それを止めてしまいパフォーマンスが落ちてしまう場合も。
数字だけを見て合理的に判断
現場のモチベーションや勢いなど、感覚的なものではなく、合理的に数字だけを見て判断する方が確実性は高いと言えます。
しかし、数字だけ見ていると、その裏に隠された重要指標を見逃したり、お客様・現場の感情を無視した判断を下してしまう場合もあるため、合理的な判断には欠点も。
定量だけでなく定性も一緒に、判断軸の中に入れておきたい情報です。
ブランドに合わない事業を増やしてしまう
たとえばweb制作会社なのに営業職が強いからと、何かサービスの集金代行を始めてしまったり、自社のブランドに合わない事業を増やしてしまう。
短期的には事業として成り立つかもしれませんが、自社がどの方向性で進んでいるのか、現場の人間はもちろん、外から見ても分からなくなり、ブランドがブレていく。
何をやっているか分からない会社より、何をやっているか明確な会社の方が依頼がしやすいと考えるため、長期的に見ればマイナスになっていく可能性もあります。
かけたお金と時間がもったいなくて撤退できない
大きくプロジェクトや事業を立ち上げ、かなりの時間とコストを投下。
しかし、結局売上が作れなかったとしても、かけた分がもったいなく、撤退せずそのままずるずると続けてしまうことも。
時間と費用はかければかけるほど、引き際の見極めが難しくなり、さらにムダを増やしてしまう場合もあります。
人材編
会社にとって、人材は成長の生命線。
その人材に対する考え方次第で、成長曲線は大きくかわってきます。
人が辞めてもすぐ次が入ると思っている
最初は1人から始まり、10人・50人・100人と増えていくと、人がいて当たり前の状態に。
誰かが辞めても、また変わりは入ってきてくれると考えていれば、現実は難しいかもしれません。
人口減少はもちろん、他社も採用に力を入れており、すぐに「入ってきてくれる」思考でいたままでは、どんどん優秀な人材は出ていくは入ってこないはで、負のスパイラルが起きてしまう場合も。
すぐに人材が欲しいからと見極めを甘くして採用してしまう
すぐにでも現場のメンバーを補充したいと考えていれば、採用する意識が強くなり、現場に合わない人材だったり、結局は自社の方向性に合わず辞めてしまう場合も。
そうなると、また採用費がかかってしまうため、延々と採用費が積み重なっていきます。
見極めの甘さが自分の首をしめてしまう。
現場で受け入れる体制がないのに人を採用してしまう
新しい人材を迎え入れるため採用をがんばるものの、現場で育てていく、または歓迎ムードもなく、受け入れる体制がないのに人材だけを入れてしまうと、結局長続きはしない。
新卒・中途のどちらにも言えて、中途であればある程度の社会人経験とスキルをもってはいますが、誰だって新しい会社に入る時は緊張も疲れもします。
ケアやフォローの体制が無い状態だと、新しい人材のストレスなどが許容量をすぐに超えてしまって、退職・採用のいたちごっこになってしまいます。
減点でしか人事評価ができていない
人事評価で甘辛をなくし、公平に判断する思考だと、ついつい数字的な見やすい指標だけに重きをおいてしまう場合も。
過度な数字的減点思考にもなりやすく、人材の悪いところばかりを見つけようとしてしまう。
公平性を作ろうと思っていたのに、現場からは人間味のない評価をされていると感じ、どんどん離れてしまいます。
チームを悪くする人材を取り除けない
上司や先輩、または同僚同士の人間関係は、人材のパフォーマンスに大きく影響します。
たとえば、上司が毎回パワハラまがいのことをしているのに、売上を作っているからといって見て見ぬふりをしてしまう。
結果として、何も対応してくれない会社=社長に非難の先が向けられて、信頼性を著しく落とし、退職者の発生を止められない。
組織・チーム内の膿を取り除くのも、社長にかせられた仕事の一つ。
売上ばかりを考え人間味のないコミュニケーションをしている
売上を作る人は正義。
売上を作らない人は悪。
このような極端なコミュニケーションになっていると、売上を作っていれば何をしてもいい、売上を作ってないなら何を言われても文句は言えない。
人間味を感じない人間関係が作られてしまいます。
窮屈な仕事環境は、行くのも、仕事をするのも、顔を合わせるのも嫌、結局は退職へ向かっていく。
人が辞めていく負の連鎖を断ち切れずにいる
社内の人材がどんどん辞めていくのに、その原因を探ろうとせず、人事・総務・労務などへ任せっきりになっている場合、なかなか負の連鎖を止められないかもしれません。
部下の言葉をすべてうのみにして現場を確かめない
社長は現場メンバーに直接聞くのではなく、現場の上長に確認をとるケースが多いと思います。
しかし、上長自身が自分の役職を守るため、または出世のためにと、都合のいいことばかり話している場合も。
真実が隠され、判断を誤ってしまうこともあるため、現場から声を拾える環境も必要です。
自分の周りをイエスマンだけで固めてしまう
社長であれば、会社の中でも一番強い決定権を持っていますし、自分の会社であれば自分のやりたいことを推し進めていきたいことも多いはずです。
そのためか、自分の意見に好意的なメンバー、または否定しないメンバーばかりを周りに置いてしまい、自分の意見が通りやすい状態を作ってしまう。
間違ったことがあったとしても、イエスしか言わない人しかいなければ、たしなめてもらえないので、あとで大きな失敗を引き起こしてしまう場合もあります。
現場が望まない研修を増やす
ベンチマークしている他社も取り入れている、社長仲間に聞いた。
良さそうな研修があれば取り入れていきたいのが社長としての考えですが、もしかしたら現場はそのような学びを求めていない場合もあります。
求めていないとしても、業界的に知っておくべきことがあれば必要ですが、何かを無理して覚えさせるのは反発も生むので、本当に必要な研修かどうかを見極めたうえで、実施する必要があります。
多様性を目指しているのにただの合理性になっている
多様性のある組織を目指しているのに、採用の判断軸として、今まで通りの自社が求めている人材を採用してしまいやすい。
結局は、管理しやすかったり、コミュニケーションしやすい人ばかりを採用するので、多様性が生まれず合理的な判断でしか、組織を作っていけない場合も。
コミュニケーション編
経営者とその他メンバーには、大きく心理的ハードルが存在しています。
また、持っている決定権の強さによって、不都合な決定になってしまう場合も。
話し合ったとしても最終的に自分の意見に誘導していく
アイデアを一緒に出し合いながら進めていく、またはすり合わせて決定事項を決めていく話し合いの場にて、最終的に自分の意見に誘導していく方もいるかもしれません。
そのような会議が続くと、ただの見せかけの会議で、結局は社長の意見になるのだからと、周りが何も意見を言わなくなる。
または未来が決まっているのだからと、本気で向き合ってくれなくなる場合も。
自分の発した言葉がどのくらい影響力を持っているか気づいていない
経営者の言葉一つ一つには、大きな重みがあります。
冗談でも、会社としては経営者が最高権力者なので、部下に重くとらえられてしまったり。
自分が発する言葉の重みを理解していないと、知らず知らずにうちに部下を傷つけている可能性もあります。
相談相手がいなくて孤独
経営者自身が何か弱音を吐いたりしていると、部下にも心配させてしまうため、経営者らしい振る舞いをあえてされている方もいらっしゃると思います。
また、最終的な判断は経営者が行うため、その選択の責任もある。
常に孤独であったり、気軽に話せる相手が社内にいないと、どんどんマイナス感情が膨れ上がって、精神的につらい…。
忙しすぎて連絡を返せていない
何かに集中して業務に取り組める時間は、経営者の場合は少ない。
日々、誰かに指示を出し、判断をし、先へ進むために思考を止めない。
忙しすぎて、何か質問や回答を求められていても、他のことで手一杯なので、すぐに返答が返せない状態が続いていると、現場の業務が止まってしまい、返答を返せないことが会社としてのボトルネックになっている場合も。
思いついたことをすぐ部下に対応させる
思い付きで何か閃いたり、天からのお告げのようにアイデアが下りてくる場合もあります。
そのアイデアをすぐに実行すべく、毎回部下に頼んで対応をさせる。
対応させるものの、結局は続かずに辞めたり、思い付き感が強いほど現場の心は離れていきます。
全部自分でなにもかもやろうとする
自分でやった方が早い。
自分がもっともクオリティを出せる。
など、なにもかも全て自分でやろうとして、時間がいくらあっても足りない状況になっている方も。
頼れるメンバーがいない、または頼るのが苦手な方ほど、自分にムチを打って辛い状況に。
言語化できずに部下へ意図を伝えられない
いつも指示だけをして、何のために行うのか伝えていない、または部下に分かる形で言語化できずに的確な指示ができない。
やってもらったとしても結果が求めていることからズレていたり、何度もやり直しになって余計に時間を使ってしまう。
言語化ができずにいると、部下に大きな負担となってしまいます。
部下の部下に直接依頼をしてしまう
指示の伝わり方は、組織によっても変わりますが、一般的には社長→部長→課長→一般のような流れで降ろされてきます。
しかし、たとえば社長がいきなり現場メンバーに指示を出してしまうと、中間の部長・課長に話が通らずに業務が進んでしまう。
そのような状態になると、
- 部長課長は「話を聞いていない」と拗ねてしまう
- 指示系統が壊されてコミュニケーションが滞る
- 部長課長の存在意義がなくなる
組織の運用ルールが壊されてしまうため、混乱が生まれやすくなります。
話し合わずに勝手に自分だけで決めてしまう
経営者は一番強い決定権を持っているため、誰かと話し合わず勝手に決めれることも多い。
そのため、会社にとって重要なことを経営者だけで決めてしまい、あとでトラブルになる場合も。
部下は自分が信用されていない、またはワンマン社長だと感じて辞めてしまうかもしれません。
権限の影響力を理解していない
経営者が頼めば、部下の多くはそれに従おうとします。
しかし、それが部下同士になると、強制力や決定権がないため、なかなか頼みづらい。
経営者ができる事は、他の部下にとってハードルが高い場合もあるのに、自分ができるからと部下にも同じことを要求して、辛い仕事をさせてしまっている場合もあります。
人事評価編
採用した人材に長く働いてもらうには、適正な人事評価が必要です。
しかし、適正にやっていると思っていても、現場では納得のいかない評価だと感じている場合も。
任せたのは自分なのに失敗したらダメ社員の烙印を押す
何か大きなプロジェクトを進める際、部下を抜擢しなくてはいけません。
また、成功するか失敗するかも分からない状態なので、それ相応の覚悟も求められる。
成功・失敗どちらも任せた経営者の最終的な責任になりますが、失敗した部下に責任の全てをとらせてダメ社員の烙印を押してしまう方も。
部下に目標を多く持たせすぎてしまう
人事評価を行うには、立てた目標に向かってどのくらいの成果をあげられたのかで判断するケースが多いと思います。
しかし、評価のタイミングによっては、立てた目標数が多すぎる場合も。
たとえば半期(6か月間)で判断する場合、たった半期分の時間しかないので、大きな成功を作るためは時間が足りないかもしれません。
それなのに6個も7個も目標を作り、リソースを分散させてしまう。
結果としてどれも中途半端になり、人事評価もできず、部下本人にとっても不服の残る評価に。
上がらない評価、そして正しく評価をされていないと感じ、退職者がどんどん出てしまいます。
最後に
経営者だからこそ、行動・発言の一つ一つに重みが出てきます。
誰もが完璧な判断を毎回できるわけではなく、失敗も繰り返しながら成功を作っていく。
とても大変な役割を持たされているからこそ、経営者の一挙一足がとても大事に。
失敗しやすいあるある内容をまとめたので、少しでもお役に立てられれば幸いです。