いつも見て頂きありがとうございます!「エンプレス」の編集部:sugiyamaです。なぜなぜ分析(別名:なぜなぜ5回)は、現状分析する方法として便利なので、やり方・コツ・事例を見て頂ければ嬉しいです。
- 目次
- なぜなぜ分析とは何?
- なぜなぜ分析のやり方とは?
- なぜ5回繰り返すのか?
- なぜなぜ分析はどうして必要とされているのか?
- なぜなぜ分析を成功させるコツ
- なぜなぜ分析の事例
- 『なぜなぜ分析』と『ロジカルシンキング』の違い
- なぜなぜ分析は意味がない?
なぜなぜ分析とは何?
なぜなぜ分析とは、発生した問題・課題に対して「なぜ(why)」を繰り返し、根本的な原因にたどり着くための考え方。※ 根本的な原因とは、真因(本当の原因)と言います。
分かったつもりにならないよう、論理的に問題発生から原因までを、文脈として見える形で繋ぎながら、理解度を深めていきます。
たとえば表層の問題だけしか解決できていないと、結果として何度も問題が発生して仕事に大きな穴をあけることにもなる。
思考を巡らせて、最短で正しい回答を導き出すために、多くの方に使われています。
なぜなぜ分析を簡単に言えば?
現状を明らかにしながら問題を分解して原因を深堀していくこと。
なぜなぜ分析のやり方とは?
なぜなぜ分析は、難しい知識やスキル不要で、誰でも簡単に扱えます。
なぜなぜ分析の公式
なぜ × 4~5回 = 原因にたどり着く
実際に、どのようなやり方になるのか見てみましょう。
例:広告を出稿しているが成果がない
なぜ?(1回目)
→出稿している媒体がターゲットに合っていないから
なぜ?(2回目)
→ターゲットを明確にイメージできていない状態で選んだから
なぜ?(3回目)
→ターゲットに近しいユーザーへヒアリングを行っていないから
なぜ?(4回目)
→予算がなくてお金を使った施策ができなかったから
なぜ?(5回目)
→費用対効果を説明せず予算獲得だけで申請したから
結果:改めてユーザー調査の費用対効果を社内へ説明してから広告出稿を検討する
資料:なぜなぜ分析のサンプル一覧(30業界分)>
どうでしょうか?なぜを繰り返し考えていくと、問題になっていた部分が可視化されて、原因に気づきやすくなります。
なぜなぜ分析を可視化する方法
なぜなぜ分析では、本当の原因を探っていきますが、道も正解も1つじゃない。
考えていくと、枝分かれになっていく場合もあるので、全てを書き出そうとすると情報がごちゃまぜになって、余計に分からなくなってしまう。
そんな時は、情報の可視化に有効であるロジックツリーを使っていきます。
木の枝分かれのように、どんどん文脈を分けていく。
書くことで、頭の中の情報が整理され、原因にたどり着きやすくなっていきます。
なぜ5回繰り返すのか?
『なぜ』の繰り返しは、最低5回と言われています。
この5回という回数は、明確に決まっているわけではなく、状況に応じて増減はありますが、5回ほど繰り返し深堀することで、大抵は見えていなかった原因が見えてくるから。
また、普段業務をしていれば、無尽蔵に問題は増えていくので、1回1回の思考回数を増やしてしまうと、それだけで時間が取られてしまいます。
そのため、最低限の適度な思考回数が5回になっている。
毎日手軽に使うための、思考のフレームワークとして5回程度が最適です。
5回のなぜは、トヨタから始まっている
トヨタ生産方式と呼ばれる、効率的に無駄なく工場を稼働させるための考え方を編み出した、元トヨタ副社長の大野氏によって、なぜなぜ分析が広まっています。
5回という数字も、提唱者である大野氏が考え抜いて5回に収まっているからであり、これが一般的に定着しています。
なぜなぜ分析はどうして必要とされているのか?
あなたも何度か、何か困ったときにパッとひらめいた解決策やアイデアに、飛びついた経験はありませんか?
「すごくいいこと思いついた!」となり、その勢いで改善に手を出してしまうのですが、考えが浅い中で出されたことなので、結果として失敗に終わることが多い。
実は、なぜなぜ分析の1~2段階(なぜの1~2回目)くらいであれば、誰もがすぐ考えつきます。
長い間困っていた…
問題を今すぐ解決したい…
しかしこんな思いからか、目の前に出された解決策を「正解」だと錯覚しやすい。※ 人は不安や悩みを抱えていられないため、すぐに解決したくなってしまう性質がある。
根本的なとこが解決できないので、何度も失敗を繰り返してしまう…勢いも大事ですが、後戻りする時間もコストもムダにはできないので、あせって解決策を出さない方がいいのです。
なぜなぜ分析は、早まった解決策をストップさせ、より確実性の高い解決策を導き出す方法。
原因が一つではない場合が多い
なぜなぜ分析の特徴としては、1つではなく複数の原因を、数珠つなぎのように関連付けて、根本的な原因を探っていく。
原因が一つであれば、なぜなぜ分析をする必要はなく、パッと思いついた解決策で事足りる。
しかし、そんな単純で表層の原因だけで解決可能な問題は世の中探しても多くはなく、原因が複合的に混ざり合っている方が多い。
なぜなぜ分析は、確実に悪いポイントを一つ一つ丁寧に見つけ改善していく、日本人らしい解決策の導き方だと言えます。
なぜなぜ分析のメリット
最短で結果が出せる
何か問題を解決する時、やみくもに施策を試しても、当たりを引くまで辛抱強くやり続けなければいけません。私たちが普段の業務の中で、そこまで十分な時間を取るのは難しいですよね。なぜなぜ分析は、ある一定レベルの解決策が導き出せるような流れになっているため、寄り道せずに最短で結果を出すことに繋がるのです。
思考をフレームワーク化しているため誰でも扱える
考え方や考える順番が、すでに定義されており、やり方さえ分かれば誰にでも扱えます。難しくないからこそ、ここまで多くの方に広まっている。
チームや組織の共通言語になる
なぜなぜ分析によって本質的な問題へたどり着きやすい思考が身についているため、チーム・組織の会話がスムーズに進められます。誰もが『なぜ』を考える思考力があるため、さらにイノベーションも加速していく。
なぜなぜ分析のデメリット
フレームワークがあるため背景理解がおざなりになりやすい
思考の型を使えば、ある程度は求めていた原因にたどり着けるため、すぐになぜなぜ分析から入ってしまう方もいます。そうなると、現状を確かめる時間が少なくなり、背景を知らないままの分析にもなる。結果として、見落としが発覚し、やり直しになる場合も。
間違ったコミュニケーションになりやすい(つるし上げ)
上司部下のコミュニケーションの中で『なぜ』を繰り返し聞くと、一種の強制的な回答を求めているような雰囲気にもなり、パワハラだと思われてしまう場合も。
上司:なぜ、できないの?
部下:こういう理由があって…
上司:なぜ、その理由を排除できなかったの?
部下:実はこのような状況になっていまして…
上司:なぜ…
と、立場ある役職持ちの人から「なぜ」を聞かれると、事前の関係性にもよりますが、高圧的に感じてしまう方もいます。コミュニケーション内で、なぜなぜ分析を使うと、間違った方向に進んでしまう場合もあるため、気を付けなければいけません。
思い込みで原因を間違えるケースがある
なぜ?を繰り返す時、集めた情報と自分の中の考え方を合わせながら行います。
言ってしまえば、自分自身の発想や思い込みで考えている部分もある。
事前に背景や現状を知ってから行うなら、原因発生の一連の流れが分かりますが、その前提の情報がなければ、ほとんどが自分自身の思い込みだけで決めることに。
決めつけも発生して、本当の原因へたどり着けない場合もあるため、情報収集を行い現状理解が進んだタイミングで、なぜなぜ分析を行うのがオススメです。
なぜなぜ分析を成功させるコツ
なぜなぜ分析は『なぜ』を繰り返して原因を探っていく方法ですが、単純に『なぜ』を考えても、場合によっては結果に大きな差が表れる。
失敗するケースが多い
リサーチせず目の前の情報のみで『なぜ』を繰り返した
成功するケースが多い
リサーチして様々な視点で考えられる情報を用いて『なぜ』を繰り返した
この違いは『なぜ(問い)』に対する精度の甘さ。
なぜなぜ分析をすること自体は、誰でも簡単に今すぐできる方法であるものの、一つ一つの『なぜ』が核心に迫るような質問でなければ、より成果の高い解決策が導けません。
なぜなぜ分析とは、言い換えれば問いの連続であるため、そもそもの問いが低ければ結果も悪くなってしまいます。
良質な『なぜ(問い)』を導き出す方法とは?
本当の原因を見つけ出し、解決していくには、なぜなぜ分析の精度を高める必要があります。
精度を高めるには、
① 最初からすぐに解決策と紐づけない
② 現状の理解に努める
③ 解決すると一番効果の高い問題に絞る
お役立ち資料:課題の可視化・改善・共有ツールRanabase(ラーナベース)>
この3つが大事なので、それぞれ詳しく見てみましょう。
① 最初からすぐに解決策と紐づけない
原因を探る前から、すでに存在する、またはすぐ頭に思い浮かぶ解決策と紐づけながら考えてしまうと、本当の原因にたどり着けなくなります。
私たちは、分からないことよりも、すでに知っている・分かっていることで解決するのを好み、あまり脳に汗をかきたくない。
手軽にできそうな解決策を、当て込んでしまうケースも多いため注意が必要です。
② 現状の理解に努める
まずは現状がどのような状態になっているのか、ここが分からなければ、なぜなぜ分析をやっても意味がない。
根本的な原因へたどり着くためには、そこへ至るまでに何個も原因とぶつかっていきます。
途中で発見できる原因も大事ですが、根本的な原因が分からず解決する手段だけが先に決まってしまうと、何度も失敗を繰り返すはめにも。
現状理解をするには、
- 何が起こっているのか現場から現実を把握する
- 部分部分ではなく全体の文脈を繋げて考える
- 定量的なデータを得る
- 定性的なデータを得る(人間の感情など)
- 全ての情報を見える化しておく
このように、起きている出来事の理解から進んでいきましょう。
感情と事実は分ける
なぜなぜ分析を行っていくと、自分事で考えたり、周りからヒアリングするため、たくさんの感情にも出会います。
「あの人がやってくれないんだよ…」
「もうこんな面倒な仕事はいやだ…」
「給料が低いのに難易度が高すぎ…」
しかし、これらの各感情を入れて分析してしまうと、誰か特定の人の考えに寄ってしまう場合も。
また感情が入ると、そこの説明がされない場合、他の人が見た時に全体としての意見なのか、と勘違いしてしまいます。
感情と事実は分けて考えましょう。
③ 解決すると一番効果の高い問題に絞る
現状が見えてくると、今なにをすべきか分かってきます。
- 今がいいのか後でいいのか
- 難しいのか簡単なのか
- 成果が大きいのか小さいのか
解決すべき原因の優先順位が判断できると、迷いなくなぜなぜ分析が実行できます。
逆に、現状が分かっていない状態で、なぜなぜ分析を行うと、迷いや後戻りが多くなるので、余計に時間がかかることも。
なぜなぜ分析の事例
なぜなぜ分析を、どのようなシーンで活用していくのか、事例を作ってみました。
テンプレート(フレームワーク)
現状で把握した問題
それはなぜか?(1回目)
それはなぜか?(2回目)
それはなぜか?(3回目)
それはなぜか?(4回目)
それはなぜか?(5回目)
根本的な原因
※ 業界問わずどこの誰でも使えるのがメリットです。
営業編
背景
伝統ある会社で、昔から地元に根付いてきたコミュニケーションによって、お客様が継続的に回っているが、営業人数が少ない中、一人に対して多くのお客様を抱えている状態で、日々稼働をしており負担が増えている。
項目 | 原因 |
---|---|
現状 | 残業続きで営業スタッフの疲弊によって売上が落ちてきている |
なぜ?(1回目) | 商談は確保できているがお客様に時間を使えていないから |
なぜ?(2回目) | 1日にこなさないといけない業務が多すぎるから |
なぜ?(3回目) | 営業1人に対して対応するお客様が多いから |
なぜ?(4回目) | 報告業務を紙で書いたりアナログ作業が多いから |
なぜ?(5回目) | 社内のデジタル化はセキュリティの観点から進められていないから |
根本的な原因 | 営業の負担を取り除けるデジタルツールの活用が遅れている |
解決策 | セキュリティなどIT人材の雇用とセットにして日々の営業業務をデジタル化できるツールを導入 |
ミーティング編
背景
従業員間のコミュニケーションを図るために、社内の方針としてはミーティングを推奨しているが、普段忙しい人たちの予定を合わせるのが難しかったり、問題は色々ある。
項目 | 原因 |
---|---|
現状 | ミーティングが時間通りに終わらず毎回5~15分伸びてしまう |
なぜ?(1回目) | ミーティング中に今日話す議題や情報が共有されるから |
なぜ?(2回目) | ルーティン化して集まることが目的になっているから |
なぜ?(3回目) | 何を話すのか分からず集まるため他人事の状態で始まるから |
なぜ?(4回目) | 定例会議の重要度が下がっているから |
なぜ?(5回目) | 普段の業務が忙しいから |
根本的な原因 | 社内方針と現場の状況が合っていない |
解決策 | 社内方針の見直しでミーティングの在り方を問い直すこと |
新商品編
背景
既存商品があるものの、第二の事業の柱を作るため、新しいブランド作りをしている。
項目 | 原因 |
---|---|
現状 | 新商品を作ったが売上が伸びない |
なぜ?(1回目) | 想定していたユーザーに購入してもらえていないから |
なぜ?(2回目) | ユーザーが求めていない商品になっているから |
なぜ?(3回目) | 既存商品の延長で作ってしまったのに新しい顧客へ売り出しているから |
なぜ?(4回目) | 企業側が売れると思ったユーザーをターゲットにしているから |
なぜ?(5回目) | 思い込みでターゲットを決めているから |
根本的な原因 | ニーズがないユーザーに向けた商品を作ってしまっているから |
解決策 | 口コミやヒアリングなどユーザーの理解度を深めてから商品企画を行う |
組織編
背景
従業員が増えてきて売上も継続的に伸び続けているが、それと同時に社内からの不平不満が増えてきた
項目 | 原因 |
---|---|
現状 | 辞めそうになかった方からの退職報告が増えてきた |
なぜ?(1回目) | 人数が増えて一人一人の把握ができなくなってきたから |
なぜ?(2回目) | 一人にかけられる時間が少なくなってきたから |
なぜ?(3回目) | 組織運営や人事に関する業務が増えてきたから |
なぜ?(4回目) | 時代に応じた新しい対応が次々必要になってきたから |
なぜ?(5回目) | 変化に対応できない体制になっているから |
根本的な原因 | 成長企業に求められる体制が作れておらず従業員の不満噴出に繋がっている |
解決策 | 人材管理をリアルタイムで定量・定性のデータ化できるツールを導入する |
クレーム編
背景
新しい市場に新しい商品を売り出した。
項目 | 原因 |
---|---|
現状 | 使い方のクレームが減らない |
なぜ?(1回目) | 商品の説明が読まれていないから |
なぜ?(2回目) | 説明書が専門用語だらけで見ても理解できないから |
なぜ?(3回目) | 商品開発チームが自分たちの分かる言葉で作っているから |
なぜ?(4回目) | 説明書を作る専門チームが存在していないから |
なぜ?(5回目) | 商品開発にばかりコストがかけられているから |
根本的な原因 | 売れればいい思考になっている |
解決策 | 売ってからのお客様フォローまで意識するためにカスタマージャーニーマップを作製して、お客様の一連の流れをチーム全体で共通認識を持たせる。 |
『なぜなぜ分析』と『ロジカルシンキング』の違い
なぜなぜ分析を知っていくと、ロジカルシンキングと似ていると感じるかもしれませんね。
どちらも『なぜ?』『つまり?』で問いを出しながら、現状把握を行っていきますが、明確には違ってきます。
なぜなぜ分析 :思考の型(方法寄り)
→方法が1パターンでなぜを5回ほど繰り返していく
ロジカルシンキング:論理的に考える(概念寄り)
→さまざまな方法を用いて論理的に分析していく
似ているため混乱しますが、結論に至るまでの方法が1つか複数かで、覚えておくと分かりやすいと思います。
なぜなぜ分析は意味がない?
なぜなぜ分析は、現状把握しながら原因と解決策を探っていく方法ですが、威力を発揮するシーンと、そうでないシーンが存在しています。
× 個人の問題解決に使う
〇 仕組みの問題解決に使う
あの人が、この人が、と個人に向けられたミスや問題を解決するために、なぜなぜ分析を使っても的外れな解決になる場合も。
個人の問題解決は部分最適化でしか話ができず、結果として問題の先送りをしてしまうからです。
チーム・組織で動く前提で、仕組化された業務に対しての改善で、なぜなぜ分析は合っている。
使いどころを間違えないと、効果を十分に感じられます。